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2007 6.28 THU

第4回東京財団フォーラム「緊張する米・イラン関係と世界」

去る6月28日(木)に開催した第4回東京財団フォーラムでは、佐々木良昭主任研究員が、防衛大学校教授の孫崎享元イラン大使をゲストにお招きして、「緊張する米・イラン関係と世界」と題する対談を行いました。

当初は、国際カスピ海研究所のアッバス・マリキ所長を迎えて鼎談を行う予定でしたが、親族の不幸のため急遽来日が延期され、孫崎教授との対談になりました。

周知のように、年初からイランの核開発問題をめぐってアメリカのイラン攻撃が取りざたされてきましたが、今回のフォーラムでは、イランから専門家を招いて、もしアメリカがイランを攻撃すれば、イランはどうするか、世界はどうなるか、日本はどう対応すべきか、という議論を行う予定でした。

イラン人専門家の参加が得られなかったのは残念でしたが、佐々木、孫崎両氏の対談は、その空白を埋めて余りある白熱したものとなりました。

佐々木研究員は、アメリカがイランを攻撃するとすれば、ドル基軸通貨体制の堅持、石油エネルギーの世界支配、超大国の地位の維持がその理由であると主張しました。

しかし、もし戦争が起これば、ホルムズ海峡は封鎖され、ペルシャ湾は危険海域となるという事態が予想される。また、その影響はイラン一国にとどまらず、周辺の中東諸国に飛び火し、さらには中国の不安定化をも引き起こす。治安の悪化により、世界経済は大混乱をきたす。

佐々木研究員によれば、戦争が起こっても起こらなくても、ドルの下落とアメリカの権威失墜は避けられないとの見方でした。

これに対し、孫崎氏は、アメリカの国民は「強い大統領」を望んでおり、イラク情勢が泥沼化した今、アメリカ国民、特に国内のユダヤ人勢力は、イスラエルを地図上から消すと公言したアフマディネジャド大統領率いるイランをどうしても叩きたい。この点では、共和党も民主党も利害を共有しているとの見方を示しました。

孫崎氏によれば、イランにしても、イスラム原理主義を標榜する現政権は、核関連施設のピンポイント空爆であれば、米国の攻撃をむしろ歓迎する。なぜなら、それにより国内の改革派の勢力を抑え込む口実ができると現政権は踏んでいるからです。

他方、佐々木研究員は、最近のイラン情勢について面白い見方を提供しています。空爆という目に見える形ではないにせよ、アメリカのイランに対する「低烈度の戦争」は、すでに始まっていると言うのです。

テロを仕掛け民心を混乱させ、国内不安を煽るような政権批判を扇動する。また、国民生活を窮乏させるための経済制裁などの手段を使って、低烈度の戦争を仕掛けているという見方です。

これに対して孫崎氏は、9.11を例にとり、アメリカのイラン攻撃の論理を説明しました。それは、国防総省を中心とするアメリカの軍事エスタブリッシュメントにとって、ソ連崩壊後もその地位と軍事予算を維持するためには、「第2の真珠湾攻撃」を必要とした。それが9.11だった、というのです。

9.11によって初めて、アメリカのアフガニスタン攻撃もイラク戦争も可能となった。孫崎教授は、このことをさまざまな1次資料を使って見事に説明しました。その論理展開は息を呑むほどの迫力がありました。

最後に、両氏とも、米国はもはや同盟国としての日本を以前ほど必要としなくなっており、日本は早くその事実を認識し、自国の安全は自分で守るという気概を、日本人一人ひとりが持たなければならないと強調しました。

特に、北朝鮮はもはやアメリカにとって、脅威でも何でもなくなっており、北の攻撃に対して、米国が日本に代わって防衛するなどと期待してはいけない。北朝鮮の脅威は、日本が自分の手で守るしかないと釘を刺したのが、聴衆の胸に鋭く突き刺さったようでした。

今回のフォーラムで、専門家だけでなく、一般の方々もイラン問題に大きな関心を持っていることが、予想を上回る出席者と、質疑応答を時間超過で打ち切らざるを得なかったことからもわかりました。

イラン情勢の今後の展開は予断を許しませんが、折を見て、今回招聘できなかったイラン人の専門家を交えて、今回のフォーラムの続編を開催したいと考えております。

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