東京財団政策研究所 Review No.6

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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07資源に関わる紛争であることを指摘している(HIIK、2019)。CEの標準化を進める欧州欧州ではCEの構築とともに、CEを国際標準化する動きもはじまった。2018年6月、フランスの標準化組織であるAFNOR(アフノール)より、国際標準化機構(ISO)に、CE関連プロジェクトに関する国際標準規格策定のための技術委員会(TechnicalCommittee:TC)の設置提案が出されている。これは、他の既存のTCでカバーされているものは除き、CE関連プロジェクトの実施に関連する要件、フレームワーク、ガイダンス、および支援ツールなど、CE分野における標準化を図るもので、提案内容ではCE関連プロジェクトの実施を希望するあらゆる組織に適用されることを目指している。またTC設置提案は、国連の持続可能な開発目標(SustainableDevelopmentGoals:SDGs)の実施に貢献するものともされているのだ。こうしたAFNORからの技術委員会設置の提案は認可され、ISOの中にCEの国際標準化を進めるTC323が設置されるに至り、2020年4月現在、62か国のTC参加国と13か国のオブザーバー国が参加している。EUのCEPは、「コミュニケーション」という拘束力はない政策文書にあたるものだが、1995年に発効した世界貿易機関(WTO)のTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)では、WTO加盟国は原則としてISOや国際電気標準会議(IEC)など国際的な標準化機関が作成する工業製品に関する規格や、認証制度といった規格への適合性の評価手続きなどの国際規格を自国の国家標準においても基礎とすることが義務付けられている。に20倍に増えるとしている。EUでは2011年から3年ごとにCRMsのリスト化を行っており、2011年に作成された最初のリストでは14鉱種のCRMsが指定され、2014年には20鉱種、そして2017年にはレアアース、コバルト、インジウム、タンタルなどを含めた27鉱種の鉱物がCRMsと指定されている(EC、2018)(表1)。さらに、CRMsの回収を促進するための優良事例をまとめた報告書を作成するほか、CRMsに関する加盟国による対策を奨励している。具体的には、廃棄自動車に含まれる価値の高い様々な鉱物の漏えいを防ぐため、廃棄物出荷に関するEU規則の中で、所在不明の廃棄自動車も含め、廃車から処理施設に運びこまれるまでの追跡・管理のためのさらなる措置を講じることなどが示されており、自動車部門をはじめ、採鉱部門、埋め立て部門、電気機器部門、蓄電池部門、再エネ部門、防衛産業部門、化学・肥料部門について、措置が必要な主要な部門として施策が計画されている。これらの動きは、米国における紛争鉱物規制の動きとも関連して、組み立て産業におけるサプライチェーンを通じた資源調達に関わる責任追及を強めている。紛争鉱物は、2010年7月に米国金融規制改革法(通称「ドッド・フランク法」)によるコンゴ民主共和国(DRC)および周辺9か国で採掘される鉱物資源のうち「タンタル、錫、タングステン、金」(3TG)と、その派生物と定義されたものであり、資源調達の資金が人権侵害、環境破壊などを引き起こす武装勢力の資金源となることの防止を目的としている。法の対象となる米国上場企業は、自社製品に使用される紛争鉱物が、これらの地域の武装勢力の資金源となっているかどうかを把握し、年次で開示することを義務付けられた。オランダの多国籍企業研究センター(CentreforResearchonMultinationalCorporations)は、2015年に、3TG以外にも武装勢力や反社会的勢力の資金源となっている鉱物資源採掘についてのレポートを発刊しており、この中ではペルーやコロンビア、ブラジルなどにおける数十の金属資源を含む鉱物資源について、その調達資金が武装勢力や先住民族との紛争、麻薬カルテルなどの資金として流れていることを指摘している(SOMO、2015)。また、ハイデルベルク国際紛争研究所は、2018年に365の紛争が発生しており、そのうち173件が「暴力」と規定され、92件は自然表1●CriticalRawMaterials(CRMs)に指定された27種類の鉱物CriticalRawMaterialsAntimonyFluorsparLREEsPhosphorusBaryteGalliumMagnesiumScandiumBerylliumGermaniumNaturalgraphiteSiliconmetalBismuthHafniumNaturalrubberTantalumBorateHeliumNiobiumTungstenCobaltHREEsPGMsVanadiumCokingcoalIndiumPhosphaterock出典:"EC,ReportonCriticalRawMaterialsintheCircularEconomy,2018"HREEs=HeavyRareEarthElements,LREEs=LightRareEarthElements,PGMs=PlatinumGroupMetals


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