東京財団政策研究所 No. 7

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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09のある国と地域への経済援助を実施して、彼らに台湾との断交を促し、台湾包囲網が作られている。それによって、台湾が国際社会で孤立すると考えているのだ。ちなみに、現状、台湾と国交関係を維持しているのは15か国しかない。現在、世界、とりわけ、発展途上国からみると、中国は間違いなく気前のいい富豪のように思えるだろう。2018年9月北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」で、習近平国家主席は600億ドルもの経済援助を表明した。これはアフリカにおける1年間のGDPの2.6%に相当する規模だった。英国の格言では「永遠の友も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益のみだ」といわれるが、中国のアフリカ外交は、台湾の孤立と国連における発言権強化を狙っているとみられている。問題は、利益の上で築かれているアフリカ諸国との経済外交を持続するには、大規模な経済援助を続けていかなければならないことにある。経済援助を止めれば、その一部の国はすぐさま改心してしまう恐れがある。一方、先進国に対する中国の外交は、アメリカとヨーロッパを天の両側にかける形でバランスを取るやり方である。これは中国の伝統「東辺不亮、西辺亮」、すなわち、「東のほうは明るくなくても、西のほうは明るい」という考え方に合致するものである。毛沢東時代の外交は、ソ連(当時)をはじめ、ほかの社会主義陣営の国々との関係を悪くさせ、中国は孤立していった。その結果、1970年代に入ってから、帝国主義とみられていたアメリカとの関係改善が模索されていた。しかしながら習近平政権が、強国復権である「中国の夢」を打ち出してから、政権運営には強い向かい風が吹き荒れ、とくに新型コロナウイルス危機によって、多国籍企業がグローバルサプライチェーンのあり方を見直そうとしている。多国籍企業が完全な“脱中国”をすることはありえないが、中国に集中している生産ラインを他の新興国へ分散する可能性は高いと思われる。それに、中国が政治外交的にウイルスの感染情報を正確に公表しなかったことから、国際社会におけるイメージが大きく下がってしまった。もっといえば、国際社会の中国に対する不信感が増幅しているのだ。なによりも、新型コロナウイルスの発生源をめぐり、中国はWHOをはじめとする国際調査チームを受け入れなかった。中国政府の公式見解は、「ウイルスが最初に感染したのは中国だが、その発生源は中国ではない」という強い主張である。半面、中国政府はいわゆる「マスク外交」を通じて、国際社会の批判を和らげようとしているが、マスクの輸出に政治的な意図が見え隠れするため、むしろ逆効果になっている。結論的に、新型コロナウイルス危機はまだ終息していないが、習近平政権を取り巻く国際環境は、大きく変わろうとしている。グローバルサプライチェーンの新たな形6企業経営の基本は、利益を最大化することである。そのために製造業企業は、生産ラインをできるだけ最終消費市場に近いところに設置することが重要である。さらに、利益を最大化するためには、生産コストを最大限に縮小しなければならない。このような基本的な考えを踏まえて、日本企業を含む外国企業は、過去20年間、中国に生産ラインを集中させた。その結果、中国の南部沿海地域を中心にして、自動車、電子機器、半導体、機械、精密機器などの産業密集地ができている。中国における製造業展開の優位性は、もともと、①廉価で、教育された豊富な労働力、②整備された近代的な物流インフラ、③デジタル化された流通システム、④簡素化された通関システム、⑤急成長している国内市場、などがあげられている。しかしながら新型コロナウイルス危機を契機に、


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