2008 1.24 THU
創立10周年記念シンポジウムシリーズ第1回「グローバル化時代の食文化」
創立10周年記念シンポジウム「グローバル化時代の価値再構築」
第1回「グローバル化時代の食文化」
世界各地には伝統ある質のよい素材や加工品が豊富にあります。食におけるグローバル化の加速は、各国各地の伝統食材や調理法、食産業や食文化にどのような影響を与えているのでしょうか。
第1回シンポジウムでは、イタリアで始まった食の改革運動と、東京財団「食のたからもの再発見プロジェクト」での研究成果を例に、これからの「食」の可能性について議論します。
日時: | 2008年1月24日(木) 18:30~20:00 シンポジウム(18:00 受付開始) 20:00~21:00 カクテル・レセプション |
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会場: | 日本財団ビル2階(東京都港区赤坂1-2-2) |
パネリスト: | ジャコモ・モヨーリ(スローフード・イタリア スポークスマン) 島村 菜津(「食のたからもの再発見」プロジェクト・リーダー、作家) |
モデレータ: | 加藤 秀樹(東京財団会長) |
登壇者紹介
ジャコモ・モヨーリ(スローフード・イタリア スポークスマン)
倫理的グローバリズムの確立をめざして?スローフード協会の試み
「グローバリズム」という言葉が、何か否定的な意味合いで語られるようになってから久しいですが、スローフード協会は国際協会として発足した時から「倫理的グローバリズム」というものを確立することを目標としてきました。それは、人間の良識をベースとした国際ネットワークを、情報社会のさまざまなコミュニケーション手段を駆使して作り上げていこうというものでした。
当初は、一種のユートピア思想として始められたものでしたが、創立以来20年の活動を通して、国際スローフード協会は少しずつこの概念を具体化させることに成功しました。いまや協会の会員は8万人を超え、全世界に広がる国際ネットワークに成長しました。
こうした新しいグローバル化によって、協会は、世界中のスローな生産者、料理人、大学研究者、さらには食コミュニティを代表する音楽家までをも含んだ大きな共同体になりました。現在スローフード協会は、この食の国際ネットワークを駆使しながら新しいスタートを切り、日本の協会関係者もこのネットワークの中で、重要な役割を果たし始めています。
【略歴】 ミラノ大学哲学科卒業後、コミュニケーション、マーケティングなどの分野で教鞭をとる。現在はミラノ工科大学デザイン学科でデザイン理論を教える。食、ワイン評論家としての活動も多く、世界的に定評のあるワインガイドブック「Italian Wine」「Wines of the World」の最終選考委員の一人。元国際スローフード協会副会長。無類の日本文化の愛好家として知られる。
島村 菜津(「食のたからもの再発見」プロジェクト・リーダー、作家)
地域再生と活性化のカギは、伝統の味と農を支える原風景にあり?「食のたからもの再発見
グローバリゼーションの大きな流れの中で、日本の食卓にも食の均一化が拡がっています。
さらに、食の世界にも世界的競争力や経済効率を追い求めるあまり、日本の味を伝えてきた職人、小さな農業や沿岸の漁業を支える人々が危機に陥っています。そこには高齢化、そして後継者問題も横たわっています。
マスコミは、連日連夜、環境の時代と唱えながら、その一方で、日本人の心の中にあるような原風景を支えている人々とその食文化とを永遠に失ってしまおうとしています。
歴代将軍に愛され、千年もの歴史を誇る干し柿を守り続ける岐阜の農家たち、五十年という気の長い周期で焼畑をしながら、おいしいカブを育てる新潟の山間部の集落、東京湾からの本場のアサクサノリが姿を消した後も、細くて効率は悪くとも、舌の上でとけるような風味にこだわり、これを作り続ける九州の漁師たち。そして、遺伝子組み換え大豆が、大量に輸入される中、国内自給率が3パーセントに落ち込んだ大豆、それも在来種を、都会とつながりながら復活させようとする千葉の農家・・・。
日本の再生と地方の活性化のカギも、そして環境時代の生活のモデルさえも、みんな、そこにあるように思えるのです。私が執筆などを通じて、関わってきたスローフード協会の『味の箱舟』は、そんな世界中の多様な味を守ろうというネットワークです。『食のたからもの』プロジェクトでは、その経験といかし、時に連携しながら、より積極的に、しなやかに生産者と地域を盛り上げていきたいと考えています。
【略歴】 東京芸術大学美術学部卒業。日本文芸家協会会員。スローフード・ジャパン『味の箱舟』担当。著書に、 『スローフードな人生!? イタリアの食卓から始まる』(新潮社)、『イタリアの魔力』(角川書店)、『スローフードな日本』(新潮社)、『バール、コーヒー、イタリア人?グローバル化もなんのその?』(光文社)など。