東京財団政策研究所 Review No.04

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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08究成果を公表できない場合がある。結果的に、民間シンクタンクの多くは企業に情報サービスを提供するコンサルティングになっている。ちなみに、中国でもっとも活躍している民間シンクタンクは、北京天則経済研究所である。この研究所は中国人経済学者・茅于軾などが発起人となって、1993年に設立されたものだ。国家の基本方針に反して、国有企業の民営化などに関する研究を行ったとして、免許が取り消され、ウェブサイトも閉鎖させられた。現在、リベラルな研究者のほとんどは大学に散在して、インターネットで発言を試みている。ただし、中国のインターネットは前掲の図表2にある「中央網絡安全と情報化領導小組」の管理の下で、リベラルの研究者の多くは、SNSのアカウントが取り消され、情報発信ができなくなっている。一方、現在の中国で重要な役割を果たしているのは、政府系シンクタンクである。図表4に示したのは、中国共産党中央委員会ならびに国務院が認定した国家レベルのシンクタンクの分類である。シンクタンクにとり、国家認定を受ければ、政府機関から委託研究を受注することができるメリットがある。その直属の政府機関から委託研究を受ける場合、経済メリットも大きいが、同時に名誉ともなる。直属政府機関以外の政府機関から委託研究を受ければ、その経済メリットはさらに大きい。とくに、中国のシンクタンクの場合、委託研究費の2〜3割を管理費として研究所に納めれば、残りのすべての研究費は研究チームが自由に使うことができる。わかりやすくいえば、中国のシンクタンクにとり、直属の政府機関から委託される研究はいわば本業である。それ以外の政府機関および企業や団体からの受託研究は副業となる。この点は日本のシンクタンクが行う受託研究と大きく異なるところである。一方、政府機関にとり、国家認定シンクタンクに有償で委託研究を外注するメリットが大きい。たとえば、ある地方政府は地下鉄建設プロジェクトのフィージビリティスタディを国家認定のシンクタンクに委託した場合、許認可を得やすいことがある。また、政府機関の責任者(たとえば、大臣など)は共産党中央委員会や国務院に経済活動報告を提出する必要造2025」の産業育成戦略である。「中国製造2025」は情報通信機器などハイテク製造業の育成が主な狙いとなっている。これまでの30余年の外資導入政策により、中国企業は外国企業の下請けとなり、中国は輸出製造企業が集約する世界の工場にまで成長した。しかし、ハーバードビジネスレビューにも度々取り上げられる有名な事例だが、米国カリフォルニアで開発・デザインされているアップル社のアイフォーンは中国で組み立てられているが、仮に1台が1000ドルするアイフォーンでも中国が得る売り上げはわずか7ドルといわれている。世界2位の経済規模を誇る中国経済は、いつまでも世界の工場のステータスに安住するわけにはいけない。当然のことだが、中国は低付加価値の生産加工からハイテク産業へと産業構造の高度化を図ろうとする。その戦略はまさに「中国製造2025」である。残念ながら、習近平国家主席の肝いりのこの世紀の大戦略は、米国トランプ大統領によって阻まれている。政策決定におけるシンクタンクの役割6政策の立案においてもっとも重要な作業は、当該分野のデータを正しく収集し正しく解析することにある。中国には、純粋な民間シンクタンクはほとんど存在していなかった。「改革・開放」政策以降、小規模な民間のシンクタンクが設立されているが、影響力は予想通り小さい。原因の一つは、民間のシンクタンクによるデータ収集が原則として禁止されていることだ。もう一つは、研究内容によってその研図表4●中国国家認定のシンクタンク(計25社)とその所属分類所属社数具体例第1分類政府機関、主に中央政府10社社会科学院、国務院発展研究センター、発展改革委員会マクロ経済研究院、国家行政学院など第2分類大学および国営研究機関12社北京大学国家発展研究院、清華大学国情研究院、復旦大学中国研究院など第3分類国有企業1社中国石油経済技術研究院第4分類独立系2社深せん綜合開発研究院、中国国際経済交流センター資料:中国国務院ChinaWatch3


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