>> P.9
09のではなく、資源の採鉱→生産→消費→廃棄、という従来の線型経済(Lineareconomy)を基にしたものとなっているのだ(図1)。一方、CEPによる資源循環は、前述したとおり個別品目を対象にしたものではなく、資源の採鉱までさかのぼった、①生産、②消費、③廃棄物管理、④廃棄物から資源へ(再資源化)、という製品のライフサイクルにおける各段階に具体的な施策を講じるものであり、その対象もすべての廃棄物が資源循環の対象とされ、再生資源が流通する再生資源市場を創出するものとなっている(図2)。さらに、施策の効果の最大化を図るため、特に対処が必要な分野として、前述した5分野を重点個別分野としている。責任の所在については、日本では「個別の生産者が拡大生産者責任を負う」という生産者主役型の拡大生産者責任であるのに対し、CEでは「リサイクル業者の活動に、すべての分野における生産者が協力・支援する」というリサイクル業主役型の拡大生産者責任となっている(喜多川、2019)。経済成長と雇用の創出がCEを構築する重要な趣旨であることから、リサイクル業を主役とすることはリサイクルの効率化を促すだけでなく、リサイクルやリユースなどの静脈ビジネスの発展にもつながることになる。欧州では、ヴェオリア社(VEOLIA)やスエズ社(SUEZ)など、メガリサイクラーと呼ばれる大企業により、廃棄物回収から再資源化、そして再生資源販売を含めたビジネスモデルが確立されており、スケールメリットを活かした大規模な展開がなされている。例えば、ヴェオリア社は、中国やシンガポールにまで進出し廃棄物処理ビジネスを行うなど大規模なビジネス展開を行い、2016年の売上げは2兆9,714億円(24,390百万ユーロ)にまで達している(経済産業省、環境省、2018)。こうした欧州のメガリサイクラーは、CEの構築により、さらにビジネスの幅を広げ競争力をつけていくことになる。一方、日本の廃棄物処理・リサイクル産業は、生産者主役型であり、廃棄物回収から選別は各産業の専門事業者が担い、廃棄物処理から販売は廃棄物処理業者が担うという細分化された構造になっている。そのため、企業規模は中小企業が多く、大手であっても年間売上規模は数百億〜1000億円程度で、とてもCEに対応して再生資源を生産、供給する体制にはない。以上のように、循環型社会の構築における日本と欧州の施策は、趣旨、内容、実効性にわたり、その体系は大きく異なるものとなっている。気候変動問題に端を発する鉱物資源リスクに対しても、日本が従来型の備蓄を主にした施策と個別リサイクル法の範疇で対処するのに対して、欧州ではよりマクロな視点から、再生資源市場の創出で資源制約と経済成長をデカップリングさせるCEによって、新たな循環型経済の構築による対処を目指しているという、大きな違いがあることがわかる。原油安と再エネ普及の動向鉱物資源リスクの発生が懸念される中、産油国による石油市場のシェア争いからくる原油の増産と、コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞から、2020年3月30日の原油価格(WTI)の終値は、バレル当たり20ドル割れ目前の20.09ドルで終えるという大幅な安値を記録した。原油価格が20ドル前半/バレルの価格となるのは、2002年2月以来のことである。2020年1月から3月までの平均価格をみても45.98ドル/バレルであり、前年平均価格の57.01ドル/バレルと比べても安値となっている。鉱物資源リスクは、エネルギー転換による再エネと省エネ・高効率機器の普及拡大によってもたらされるが、昨今の原油価格の下落は再エネ普及にどのような影響を及ぼすであろうか。これまでの再エネ設備への投資額の推移をみると、原油価格の動向にかかわらず投資が進んできていることがわかる(図3)。特に、2014年の原油平均価格93.11ドル/バレルに対し、2015年の平均価格は48.71ドル/バレルと大幅日本での循環型社会構築は、欧州CEとは違った形で進めるべき。図3●再生可能エネルギー設備投資額と原油価格の推移※2020年の原油価格は1〜3月の平均※2020年の再エネ設備投資額は推計出典:BNEF“GlobalRenewablecapacityinvestment2004to2019”及び”WorldBank-CommodityMarkets”から作成($/barrel)($billion)1201008060402020202019201820172016201420152013201200501001502002503003502011WTI原油価格($/barrel)再エネ設備投資額($billion)原油価格再エネ設備投資額