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1020092002200320042005200620072008車部門となるが、同部門は二酸化炭素排出量が多く、世界がパリ協定による気候変動問題への対策を進めていく以上、石油依存ではなく、EVをはじめとする次世代自動車の普及が必要となる。以上のように再エネの普及は、気候変動問題に対する世界の政策に大きく影響される状況にある。2018年10月には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で、地球温暖化をパリ協定の目標である2℃未満ではなく1.5℃に抑えることが、持続可能な世界を確保するために必要とされた。そのために、再エネの発電電力量構成比率を、2030年には48〜60%とするシナリオを示した特別報告書『1.5℃の地球温暖化』が公表される。つまり、世界の気候変動対策の政策方針に変更がない限り、再エネ普及は進む方向にあるのだ。一方で、コロナウイルス感染拡大の状況が長引き、世界経済に深刻な影響が出た場合、気候変動対策の政策方針は世界的に変更される可能性もある。こうした状況に対して、国際エネルギー機関(IEA)は2020年3月14日、コロナウイルス感染拡大による経済活動の低下から、2020年は二酸化炭素排出量が減る可能性があるが、長期的に気候変動リスクに対処するためにはエネルギー転換を進めていく必要があるという趣旨の声明を発表した。また、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2020年4月7日に、コロナウイルス感染拡大による経済影響は広範囲に及ぶが、再エネを中心としたエネルギー転換の推進は、雇用の創出と産業の復活に役立つとした声明を発表するなど、気候変動対策についての世界の政策動向は今後も注視する必要がある。おわりに:日本版サーキュラーエコノミー構築の必要性エネルギー転換は、化石燃料資源への依存を解消して、気候変動問題への対処策となる一方、再エネ施設やエネルギー高効率機器の製造に必要な鉱物資源の需要を高め、その供給が不安定化する鉱物資源リスクを引き起こす可能性がある。鉱物資源リスクの事例としては、前述したように2010年のレアアースショックがあるが、近年は、EVの普及増加などから、車載用蓄電池に使用されるコバルトの需給不安定化が懸念されている。その対応として、政府はコバルトの備蓄を計画しているが(経済産業省、2018)、エネルギー転換による鉱物資源リスに下落しているが、この間においても、再エネへの設備投資は増加している傾向にある。これは、再エネの固定価格買い取り制度(feed-intari(cid:30))を導入している国が2002年は23か国であったのに対し、2014年は103か国に増えていることからもわかるように、各国が原油価格の動向にかかわらず、気候変動問題への対策として、政策的にエネルギー転換による再エネ普及を進めてきたことが背景にある(図4)。すなわち、これまで再エネ普及は、原油価格の動向よりも、政策的な意図がドライビングフォースとなっていたといえる。各国の再エネ普及政策により、ドイツをはじめとして欧州では、発電電力量構成における再エネ比率が40%を超える国も現れるなど再エネの普及が進み、それとともにコストの低下も進んでいる。原油価格は、2011年の平均価格95.05ドル/バレルから2020年1〜3月平均価格の45.98ドル/バレルへと約51%下落しているが、太陽光発電施設の総設置費用も、2011年の3,891ドル/kWに対して、2018年は1,210ドル/kWと約69%も安くなっている(IRENA、2018)。こうした再エネのコスト低下は、太陽光発電だけではなく風力発電や蓄電池でも進んでいるが、その発電コスト(新設案件・補助金無、均等化発電原価kW/h)も、原子力、石炭、天然ガスを抑えて再エネが最も安い電源となってきている(Lazard、2018)。また、石油の用途という点から見ても、原油が20ドル台であった2002年においても、世界の発電電力量構成における石油割合はわずか7.1%(経済産業省、2010)であったことから考えて、発電部門における石油の役割はほぼ終えているといえる。石油の用途として大きいのは、およそ4割を占める運輸・乗用図4●再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)を制定する国の累積数出典:”TheGermanEnergyTransitioninInternationalPerspective”P7.IASS(March2016)から作成201420132012201120101201008060402002329553471944181994687101103鉱物資源消費大国である日本は、独自のCE構築を急ぐ必要がある。(か国)特別レポート