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07というのである。ペリー・リンク教授の指摘に則っていえば、2020年第1四半期の経済成長率が予想よりもマイナス幅が小さかったというのは、中国政府が社会混乱を心配しているからだとも推察できる。実際の経済運営を考えれば、習近平政権にとって、2020年の中国経済の行方は正念場であることは間違いない。李首相は政府活動報告のなかで、経済成長率目標すら掲げることができなかった。カギとなる米中関係の行方4現在、世界経済は不安定期に入っているといって過言ではない。なぜならば、世界1位と2位の経済大国が、貿易と技術などをめぐって激しく対立しているからである。米中間の信頼関係は完全に崩れている。中国外交部と新華社などの公式メディアによる米国と米国指導者への批判をみると、まるで1970年代の中ソ対立を彷彿とさせる。振り返れば、米中対立での従来の構図は、中国における人権問題をめぐる応酬でもあった。ただ、オバマ政権以降、アメリカ政府による中国の人権問題に対するクレームは大幅に減少している。その代わりに、ヒラリー元国務長官が「アメリカはアジア問題にもっとかかわっていくべき」と宣言したように、米国の「comebacktoAsia戦略」が鮮明になった。アメリカ政府が意図するのは、南シナ海の問題に加え、台湾海峡の安定・維持である。しかし、南シナ海と台湾問題のいずれも、中国では核心的利益と位置付国全土で人の大移動がすでにはじまっていたのである。しかも、武漢市民を含むたくさんの中国人は、海外旅行にも出かけており、武漢市が封鎖されたあとも、中国人観光客の出国が続いていた。そして中国全土で厳しいロックダウンが実施されたあとに、経済活動が急速に停滞した。食品と日用品を販売するスーパーと弁当などの宅配を除けば、ほぼすべての店は営業中止を余儀なくされた。また、中国では「e-Commerce」、いわゆるネットショッピングが発達しているのは周知のとおりであるが、これも、新型コロナウイルスの感染拡大によって住宅地が封鎖されたため、商品の配送業者が品物を家々へ届けることができなくなり、その結果、ネットショッピングサービス自体も機能不全に陥ってしまっている。こうした実情からは、中国経済の減速が容易に予想される。中国政府が公表した第1四半期の経済成長率は-6.8%だった(図表2参照)。ただし現象面から考えると、中国経済成長の落ち込みは公式統計よりさらに大きなマイナスを喫したと思われる。というのも、中国経済統計の信ぴょう性については、研究者の間で多くの議論がなされているからだ。最初に中国のマクロ経済統計の信ぴょう性について指摘したのは、米国ピッツバーグ大学のロースキー・ジョン・サージェント元教授(経済学)だったが、同教授は、中国のエネルギーと電力消費のGDP弾性値をもとにGDP伸び率を逆算して、GDP伸び率の不自然な動きを指摘している。他方、李克強首相は、中国における公式のGDP伸び率が信用できないとして、電力消費、鉄道の貨物輸送量と銀行の長期融資をもとに経済成長の動きを捉えていたといわれている。ちなみに、その三つの指標を組み合わせたものを、イギリス・エコノミスト誌は「李克強指数」と名付けた。中国の統計の読み解き方について、カリフォルニア大学リバーサイド校のペリー・リンク教授(中国問題専門家)は、その信ぴょう性云々よりも、中国政府がその発表を通じてどういうメッセージを中国社会に伝えようとしているかを見極めることが重要であると指摘している。すなわち、中国政府が統計を発表するときに、その数値が社会混乱をもたらす可能性があると考えれば、その統計を加減して発表する信頼できない中国の経済統計。本年、習近平政権は正念場となる図表2●中国の実質GDP伸び率の推移(前年=100)資料:CEIC(1〜3月)2020年%90120115110100951981年1993年2005年1984年1996年2008年1987年1999年2011年2014年1017年1978年1990年2002年