東京財団政策研究所 No. 7

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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06いえるだろう。中国経済の内実3あらためて中国経済の内実を検証してみよう。2020年1月15日、米中両政府は貿易交渉の第一段階の合意に達した。その合意によると、中国は、①アメリカからの輸入を大幅に増やし、②知財権の保護を強化し、③外国企業への技術移転の強要を禁止する、といったことに同意した。代わりにアメリカは、中国に対する制裁関税を追加的に引き上げないと約束している。その後の主要証券取引所における株価の動きをみるかぎり、株価が大幅に上昇したことから、米中第一段階合意は好意的に受け止められたといえよう。もともと2020年は、東京五輪・パラリンピックが開催される年で、世界経済に利する材料は目白押しだった。しかし世界経済にとって青天の霹靂だったのは、新型コロナウイルスの感染が拡大したことだった。繰り返しになるが、武漢市を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大したことによって、1月23日、中国政府は同市を封鎖した。しかし、この対応が遅すぎた。1月24日は旧暦の大日であり、中スに対する需要が急増しているが、昔からの「看病難」(病気の治療が受けられにくい)状態については改善されておらず、これも深刻な社会問題になっている。中国におけるウイルス感染対策は、厳しい都市封鎖措置によって感染拡大を食い止めることができたが、そのプロセスを詳しく検証すると、初期段階で現場医師からの警鐘があったにもかかわらず、そのような医師たちは「デマを流した」として警察から訓戒処分を受けた。そして結果的に、ウイルスは全国、そして、全世界に広がった。従って、都市封鎖の効果をもって、専制政治の優位性を語るのは論外といわざるを得ない。むろん、民主主義の国々の対応をみても、反省すべき点は多々ある。例えばアメリカのような連邦制の国は、国の役割と各連邦の役割について、感染症対策に関する境が必ずしもはっきりしていないところがある。その結果、感染症対策の“空白地帯”ができがちだったといえる。一方、日本の場合を考えると、基本的に性善説に基づく国であるため、スピード感に欠ける傾向があった。こう考えていくと、グローバル化の時代においては、何よりも国際機関の改革が喫緊な課題であり、それに対するガバナンス強化が必要不可欠であるとChinaWatch5


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