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10この問題の本質は、靖国神社参拝が日本の内政問題かどうかではなく、靖国神社参拝を通じて、日本内外に対してどのようなメッセージを伝えようとしているかにある。すなわち、問われているのは日本の国際戦略、ならびにアジア戦略にほかならない。もともと、2020年4月初旬に日本政府は習国家主席を国賓として招聘し、東京で安倍首相との首脳会談を行う予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大により、習主席の訪日が延期され、その代替案として秋に招聘することも考えられていたが、6月30日、中国全国人民代表大会(国会相当)で「香港国家安全維持法」が可決され、施行された。このことをきっかけに、日本国内の世論は一気に変わってしまった。すなわち、強権政治を進める中国の国家主席を国賓で招聘すべきではないという論調が大勢を占めるようになったのである。これで習主席の訪日は白紙になってしまった。日中関係安定化を果たせなかった安倍政権の誤算安倍政権は内政においてアベノミクスを実施し、景気浮揚を図り、いくらか成果を上げることができたのかもしれない。しかし、外交についてはほとんど実りがなかったといっても過言ではない。とりわけ、北東アジアにおいて、日韓関係は最悪な状況に陥っており、北朝鮮との対話に関しては糸口すら見出せていない。そのなかで、中国との関係を改善しようとしたが、ここに来て、その雲行きも怪しくなっている。2020年6月27日のロンドンエコノミスト誌は、香港、台湾との領海紛争は日中関係が悪化する原因と指摘している。同時に、日中の間に横たわっている歴史認識の問題もいまだに解決されていない。2020年8月15日の終戦記念日に、安倍政権の閣僚4人は靖国神社を参拝した。結論/問われる日本の対中政策新しい国際秩序のなかで日本が果たす役割とは?ChinaWatch6