公表について
東京財団では、財政健全化は日本にとっての重要な政策課題の一つであると位置づけ、独立推計機関の創設等に関する政策提言を行ってきた [1] 。政治が長期の視点を持ち、政策検討を重ね、その立案をするため、経済財政に関する中期(10年程度)および長期(30~50年程度)の推計を担う独立機関の国会での設置はきわめて重要な政治課題だが、統治機構に関わる制度案件でもあり、その合意形成にはどうしても時間がかかってしまう。
こうした現状を踏まえ、我々は、問題意識を共にする経済・財政の専門家と共に、オープンソースによる独立した日本の長期の財政に関する推計ツール(以下、本ツール)を構築し、これを公表することにした。
本ツールは、フリーの統計解析プログラムであるRをベースに、誰にもアクセス可能な公開データを用いて、すべての前提条件(ロジックやパラメーター)を公開した長期(50年)の財政推計である。基本構造としては、マクロ経済前提および人口推計をベースに、今後50年程度にわたる歳入および歳出を積み上げ式に計算し、基礎的財政収支や政府債務残高等の推移、つまり日本の財政の実態を明らかにしたものである [2] 。
本ツールは、本ツールはオープンソース(MITライセンス)を用いており、オープンソースによるプログラミングなので、研究者や政策担当者はロジック等を追加し、書き換えることもできるし、併せて公表する簡便型のビジュアルインターフェースでは、計量経済やプログラミングに関する専門的な知見がなかったとしても、複数のパラメーター(経済成長、物価上昇率、次の増税時期と増税幅、医療費の国民負担率)を簡易に動かすことで、さまざまなシミュレーション分析も可能となる。
このたび公表する推計ツールはさらなる改善を見込むβ版(暫定版)の位置づけだが、財政問題は日本政治にとって重要かつ喫緊の課題であることに鑑み、前提条件やツールとしての課題を含めて公表に至った次第である。本ツールによる試算結果については、政策に対するスタンスによって、さまざまな見方はあろうが、いずれにせよ、財政は避けては通れない問題であることは明らかである。オープンソースの公共財である本ツールを活かした具体的なエビデンスに基づいた政策論争がひいては、財政問題の解決の糸口につながるものであり、政策関係者の活発な活用を期待している。
なお、個別の前提条件については、下記の推計モデル概要説明資料を参照されたい。
本ツールのバージョン
β版(Ver.6.2) 2016年6月3日更新
※6月1日に表明された消費税率引き上げ先送り(2017年4月→2019年10月)を織り込み
ビジュアルインターフェース
https://tokyofoundation.shinyapps.io/Beta62/
プログラムコード等
Copyright (c) 2015 The Tokyo Foundation
Released under the MIT license
http://opensource.org/licenses/mit-license.php
更新履歴
- 2016年6月3日更新 β版(Ver.6.2)
- 2016年5月25日更新 β版(Ver.6.1)
財政推計プロジェクト・プロジェクトメンバー
- 小黒一正 法政大学経済学部教授(財政)
- 加藤久和 明治大学政治経済学部教授(医療・介護)
- 亀井善太郎 立教大学教授(とりまとめ)
- 川出真清 東京財団上席研究員、日本大学経済学部教授(とりまとめ、プログラム)
- 小林慶一郎 東京財団上席研究員、慶応義塾大学経済学部教授(マクロ経済)
- 小林庸平 三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部副主任研究員(医療・介護)
- 島澤諭 中部圏社会経済研究所チームリーダー(年金)
- 中澤正彦 京都大学経済研究所教授(財政、2015年7月まで、肩書は当時)
- 中田大悟 創価大学経済学部准教授(年金)
免責事項等
免責事項
本ツールの提供にあたっては、数式、数値等は概要説明資料に沿い注意を払っておりますが、掲載情報および本ツールを用いて行う一切の行為に関連して、東京財団は何ら責任を負うものではありません。
著作権、使用許可等
本ツールの著作権は東京財団に帰属します。本ツールはオープンソースを用いた財政推計であり、その使用およびシミュレーション結果等を論文や記事等に掲載する場合に、当財団にご連絡いただく必要はありませんが、出典情報として「東京財団財政推計ツール」を使用した計算結果であることを明記ください。また、前提条件やロジック、プログラム等を変更された場合には、その旨も併せて明示してください。
[1] 東京財団提言「独立推計機関を国会に」(2013) 。法案は 「財政健全化の検討に必要な視点と機能 -経済財政推計委員会を国会に設置する法律(東京財団試案)について」(2015) 。また、本問題の背景にある政府による各種推計の課題についても、これらを参照されたい。
[2] マクロ前提等は別紙の概要説明資料を参照のこと。人口推計は国立社会保障・人口問題研究所によるもの。歳入と歳出の各項目について、マクロ変数と人口(年齢別)に基づいて、個々に積み上げ計算を実施。