2008年6月12日、「地方自治体のガバナンス研究」では、フランス・オーベルニュ州議会議長のルネ・スーション(René Souchon)氏をお迎えし、公開研究会を開催いたしました。(注1)
世界で有数の中央集権国家として一般的に知られているフランスですが、1980年代のミッテラン政権以降、地方分権が積極的に推し進められ、2003年には憲法を改正し、分権体制が明確になったとスーション氏から報告がありました。そして「地方分権は積極的に進めるべきだが、国民が実感できる分権でなければならない」と主張されていました。
フランス革命で廃止された「州(地域圏)(région)」が復活したことは歓迎すべきことだが、大都市間の鉄道は引き続き国の仕事、州内の都市間の鉄道と車両の管理は州の仕事というように住民や利用者の目から見て理解しにくい権限の移譲が行われたと紹介がありました。
また、十分な税財源の移譲が伴わない部分もあるため、「国が行いたくないカネのかかる厄介な仕事を地方に押し付ける分権」との批判の声があがっているとの指摘もありました。
現在、地域圏議会連合会がフランス中央政府に下記の2点を要求しているとのことです。
1. 州(地域圏)・県・市の各レベルの権限を明確にする
2. 国税の一部(将来的に増収が期待できる科目)の移管
公開研究会の後半は、テーマを「フランスの農村地域の開発」に絞り、衆議院議員伊藤信太郎氏や衆議院議員玄葉光一郎氏が参加し、活発な議論が行われました。
上院議員以外の多くの公職経験をもつスーション氏にとって最も政治の訓練を積むことができたのは、基礎自治体の長として活躍したオーリヤック市長時代であると振り返っていました。
(注1)régionは、在日フランス大使館の概要資料「地方行政制度」には地域圏と訳されている。山下茂他著「比較地方自治」(第一法規)、土岐寛他編「比較行政制度論」(法律文化社)、竹下譲監修・著「世界の地方自治制度」(イマジン出版)には、州と訳されている。本稿では、多くの日本人に馴染みのある州を優先した。