2008年12月1日
給付つき税額控除 研究会
東京財団3階B会議室
国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏から,氏が直近に出版された『子どもの貧困』(岩波新書,2008年11月刊行)から「子どもの貧困」と題する報告が行われ,現代日本において子どもの貧困が重要な政策課題として存在すると考えられる中で,どのように子どもをめぐる格差が存在しているか,またそれに対応する社会保障政策がどのようにあるべきかについて議論が行われた。
1,国立社会保障・人口問題研究所,阿部彩氏「子どもの貧困」
子どもの貧困は,現在の日本において重要な政策課題として存在している。短期的には子どもの成長や児童虐待,非行,子どもの疎外感に影響することがデータから示されている。それに加えて子ども期の貧困状況は,栄養や医療へのアクセス,家庭環境,学力などを通じて,成人期の健康や所得・幸福度などに影響をもたらすと考えられる。
子どもの貧困と,それがもたらす容認できない格差に対応するための「鍵」は所得である。特に若年層を親に持つ子どもが貧困状況に陥りやすく,また母子家庭の貧困率は世界的に見ても深刻である。このような状況において,現在の日本で教育関係の公的支出が少ないことや,貧困のリスクを抱える層の税・社会保障負担が大きすぎることは問題である。特に,日本では税による再分配前と比べて再分配後のほうが子どもの貧困率が高くなっており,現状の税を通じた再分配を見直す必要がある。しかし,その際に現在の日本の貧相な「貧困観」は障害になるかもしれない。
2,質疑応答
・再分配前後で子どもの貧困率が逆転するのはなぜか
→日本では低所得層が直接税・社会保険料を相対的に多く払っている傾向がある
→間接税を含めた推計も考える必要がある
・給付つき税額控除は重要な政策オプションではないか
→重要なオプションであることは間違いない
→ただ,単に給付をするというだけではなく,給付つき税額控除と社会保険料の負担を相殺することで,低所得層の負担を軽減することも考えるべき
→スウェーデンなどはそのような手段をとっている