日時:2008年6月16日(月)
場所:東京財団A会議室
第3回会合の議事要旨は次の通り。
冒頭、財務省主税局の松崎啓介主税調査官から, 納税者番号制度についての検討状況を説明,その後参加者の質疑が次の通り行われた。
1、検討状況について
納税者番号制度については,法令順守・各種手続きの効率化のひとつのツールとして使えないかという問題意識を持って検討が進められており,政府や与党の税調においても納税者番号制度の導入が謳われている。
想定されるしくみとしては,納税者に広く番号を付与した上で,納税者が取引の相手方に番号を告知し,納税者が納税申告書に、取引の相手方が情報申告書にその番号を記載して税務当局に提出するようなものを考えている。その際,確定申告書と取引の相手方から提出される資料情報について番号を鍵として名寄せが行われる。全国民に対して重複なく付番される番号は,民間利用が不可欠であるために,どのような付番制度とするのか、番号記載の対象となる取引の範囲をどのように設定するのか,また、それらのセキュリティをどのように確保していくかが重要な論点になる。
現存の番号としては住民票コードや基礎年金番号があるが,民間利用が禁止されているなどの問題がある。新たな番号として経済財政諮問会議では社会保障番号が提案されているが,諮問会議の議論では社会保障分野とのリンクが強調されている。また,社会保障カードの議論についてもフォローしている。いずれの番号にせよ,国民的な議論やコンセンサスが必要になる。
番号の議論と併せて税務当局が集めるべき情報を拡充していくことの重要性が税調からも指摘されている。全ての取引を把握することは現実的ではないが,諸外国の例を参考として、資金のフロー・ストックの把握という面からの所得の間接的な捕捉の必要性について議論されている。
2、質疑応答
・電子私書箱方式を使って,金融機関を経由するけど金融機関に情報がたまらないようなシステムを用いることも民間利用になるのか。
→番号が暗号化されても民間の会社を経由して送信されれば民間利用になるのではないか,また,暗号化しても,暗号化の鍵がわかれば解読される危険性等もある。
・ 付番することとフロー・ストックの資料情報を取ることに関連性はあるのか。
→そこは分けて考えている,番号制度と資料情報制度は別の話で,それを合わせたものが納税者番号制度。番号がなくてもフロー・ストックの資料情報を提出することは可能。番号により効率的な名寄せ・突合ができる。
→付番はあくまでも国民の利便性の観点から。しかし,管理される「不安」についても配慮する必要はある。
→効率性はあくまで政府の論理で,国民の側は何らかの受益がないと受け入れにくいのではないか
・住基ネットとの関係をどのように考えるか
→住基ネットを使うのであれば、国民的なコンセンサスを得た上で法律を変える必要があるし,未加入の団体をどうするかという問題もある。
→住基ネットの管理についても個人情報保護条例が市町村レベルでいくつも分かれて分立しているが,個人情報の取り扱いが市町村を移動する中で水準が変わってくるというのは問題なのではないか
→開発ベンダー以外の第三者機関が常にチェックする可能性,情報の取り扱いが大丈夫かどうかチェックするような制度的な担保を付け加えれば,プライバシーへのリスクに踏み込めるような調整弁になるのではないか
・e-taxやインボイスなどとの関係は?
→e-taxはあまり関係ない,e-taxを利用する者にID番号を振っているだけ。電子署名は本人確認のために利用しているもの。
→インボイスも相手方との個々の取引について連続番号を振って照会できるというもの,税務署に提出される資料ではない。
→むしろ番号制度が出来たあとで,金融所得課税やインボイス,還付制度のような他の制度設計に活用することを考えることができるのではないか