高齢者人口の増加と医療・介護費用の増加を踏まえ、医療・介護制度は改革を迫られています。例えば、費用を抑制するための方策だけでなく、高齢化の進展を受けて慢性疾患の患者が増えるため、単に「病気を治す」医療だけでなく、切れ目なく生活を支える視点が必要になってきています。
本報告書では、切れ目なく生活を支える提供体制改革を「あるべき姿」に位置付け、その実現のためには都道府県や提供体制の大半をしめる民間医療機関だけでなく、介護事業者、住民など多様なセクターの連携・協力が必要である点を指摘しました。
一方、政府は提供体制改革として「地域医療構想」を進めており、報告書では地域医療構想の成果と課題を考察しています。具体的には、地域医療構想には「病床削減による医療費適正化」「切れ目のない提供体制の構築」という2つの目的があることを明らかにし、2017年3月までにこれを策定した各都道府県は後者を重視したうえで、一部の都道府県で意欲的な地域医療構想が見られる点を成果として明らかにしました。
しかし、1. 日常的な医療ニーズをカバーする視点がない、2. 都道府県と市町村の連携が不十分、3. 住民自治・住民参加の取り組みが不十分、4. 政策的な対応が現場のニーズと噛み合っていない――という4つの課題がある点を指摘し、それに対応する政策提言として以下の4つを挙げています。
政策研究「地域医療構想の成果と課題~合意形成を軸とした切れ目のない提供体制を~」 (PDF:3.02MB)
提言(1)プライマリ・ケアの制度化
在宅医療を含む日常的な医療ニーズをカバーするプライマリ・ケアの制度化として、報酬制度やフリーアクセスの見直しを進める。
提言(2)市町村医療計画制度(仮称)の導入
プライマリ・ケアや在宅医療に関する市町村の関与を高めるため、市町村に医療計画の策定を義務付ける「市町村医療計画制度」(仮称)を導入する。
提言(3)住民自治・住民参加、合意形成の促進
提言(4)都道府県の裁量拡大
財政運営に関する都道府県の裁量を拡大するため、独自の診療報酬設定や地域医療介護総合確保基金の使途拡大、将来的な税源移譲を進める。