「日本のIFRS(国際財務報告基準)対応に関する提言」の全文はこちら
日本は2012年までに上場企業の連結財務諸表へのIFRS(国際会計基準)強制適用の有無を判断することとなっており、メディア等では、あたかも強制適用が既定路線であるかのような論調もみられます。しかし、上場企業3800社へのIFRS強制適用は「百害あって一利無し」であり、日本に大きな禍根を残すことになりかねません。
IFRSは会計基準の品質の面でも、また、コスト、法律、税務の面からも、優れた会計基準とは言えません。今回の「日本のIFRSへの対応に関する政策提言」は、多くの専門家と実務家の意見を踏まえ、IFRSが抱える問題点と日本がIFRSに対して取るべき立場について提言しています。
【政策提言の概要】
1.現行のIFRS導入スケジュールは極めて問題。直ちにスケジュールを再設定せよ
現在の上場企業強制適用の決定スケジュール(2012年を目途に判断、最速で2015年に強制適用開始)は強制適用の既成事実化につながる。直ちに白紙に戻すべき。また、米国基準の国内企業への適用終了期限(2016年3月期まで)も撤廃すべき。
2.IFRSの強制適用は不要、企業の自由意思による選択適用とすべき
IFRSの強制適用は不要。IFRSの会計基準としての品質には理論・実務両面から問題があり、投資家のためにもならない。企業の自由意思による選択適用とすべき。仮にIFRSが有用な基準であれば自然に採用企業は増え、そうでなければ増えず、それで不都合はない。
3.IFRSの内容を変える方向性について「日本の立ち位置」を確立せよ
まずIFRSの中身に関する国民的議論と日本の立ち位置の確立が必要。その際の方向性は「会計の目的は、将来キャッシュフローの予測ではなく過去の業績の結果である」という考え方に立脚すべき。IFRSを業績重視の会計基準とするため、米国、中国等と連携し、IASB(国際会計基準審議会)に圧力をかけることが必要。
<検討メンバー>
岩井克人(東京財団主任研究員、東京大学教授)
村松幹二(東京財団研究員、駒澤大学准教授)
清水 剛(東京財団研究員、東京大学准教授)
黒石匡昭(公認会計士)
佐藤孝弘(東京財団研究員兼政策プロデューサー)
山本容子(東京財団政策研究グループアシスタント)