先の参議院議員選挙で衆参の“ねじれ”が解消されたことで、安倍政権は3年後の参院選までの安定した政権運営が視野に入ってきました。一年ごとに政権が変わることで内外の不信を買っていた外交政策についても、一貫した方向を打ち出せる千載一遇の機会となります。
安倍外交は、東南アジアやインド、アフリカとの積極的な外交で成果を挙げる一方、領土や歴史認識をめぐって中国・韓国とは難しい状況が続いています。他方、米国との関係は同盟を重視しているものの、沖縄の基地問題や集団的自衛権の解釈の見直し等の行方が不透明なため、オバマ政権は期待と不安が入り混じった気持ちで日本を見ているのが現状です。
そこで、北岡伸一名誉研究員がリーダーを務める「日本外交の指針」プロジェクトでは、幅広い観点から政策課題について議論を重ね、リアリズムに基づいた硬軟両様の日本外交のあり方を「安倍外交への15の視点~ナショナリズムよりもリアリズムの追求を~」として提言にまとめました。
I.各国・地域に対する外交政策のあり方
視点1 :対中ナショナリズムを封印し、硬軟両様の戦略をとる
視点2 :韓国に対しては共通の価値の強調よりも共通の戦略目標の構築を求めるべき
視点3 :北朝鮮の軍事能力評価を再検討するとともに、将来の「対話」においては「国交正常化交渉開始」の旨味を強調すべき
視点4 :ロシアに対しては、実益に即した粘り強い外交実績の積重ねが必要だ
視点5 :アジアの新興国との関係強化を加速させる
視点6 :アメリカに対し頼れるパートナーであることを示せ
視点7 :沖縄の米軍基地問題の深層を見直す
II.多国間外交の促進
視点8 :「深さ」のTPPと「広さ」のRCEPの相互補完性に注目し、両枠組みの実現に努めよ
視点9 :安定したパートナーとしてASEANとの次世代の関係構築をすすめよ
視点10:日本の外交資産である経済援助(ODA)はメリハリをつけて強化する
視点11:国連の有効な機能を再認識し、戦略的に活用せよ
視点12:日本の原子力政策は、世界的な核不拡散体制の維持・向上を図るためにも重要だ
III.力強い外交を行うための体制整備
視点13:対外発信力の強化と報道戦に備えたパブリック・ディプロマシー戦略が必要だ
視点14:危機管理機能を制度として確立し、より能動的に日本の安全保障を全うする
視点15:日本版NSC設置に併せて、機密保護の法整備を行い、情報集約と分析提供のためのインテリジェンス・コミュニティーを形成する
去る9月2日の第64回フォーラムでは、政策提言「安倍外交への15の視点 ~ナショナリズムよりもリアリズムの追求を~」を発表するとともに、 「日本の外交指針」 プロジェクト・メンバーが、日本外交のあるべき姿と今秋から安倍政権が直面する外交課題について議論しました。 イベントの詳細はこちらへ。