現代アメリカ研究会では、民主党系アジア太平洋地域専門家であるマイケル・シファー氏を招いて、講演会を開催しました。シファー氏は、現在スタンレー財団 (Stanley Foundation) プログラム・オフィサー、およびアイオワ大学アジア太平洋スタディーズフェローとして活躍中です。現職以前には、日本の防衛研究所において外交問題評議会国際問題フェロー (Council on Foreign Relations International Fellow) として、また1995年から2004年までは、ディアン・フェインスタイン上院議員 (カリフォルニア州民主党)の政策スタッフとして、安全保障問題に取り組んだ経歴を持っています。以下に、講演の概略をまとめます。
マイケル・シファー氏講演概略
開催日時:2008年3月6日
於:東京財団会議室
米国大統領選挙キャンペーンの概略:外交政策と国内政策、および日米関係における各候補者の立場
講師のシファー氏は、米国世論の動向から2008年秋の大統領選挙が民主・共和党の間で接戦になると予測し、以下のように説明した。
大統領選挙においては、現政権への国民の評価が反映されるというのが通念となっている。現ブッシュ政権の外交・国内政策は、多くの米国民にとって評価が高くない故に、今年秋の選挙では民主党候補のクリントン、オバマに有利に働くことが予測される。
しかし、米国人の世論の構造を見れば、1990年代からこの国が50:50に二分されていることが確認できよう。2006年中間選挙で民主党が上院で多数派を取れたのは、ヴァージニア州とモンタナ州で民主党議員が僅差で勝ったからであり、これらの結果が違えば上院は共和党の手に残っていたかもしれないのである。今年の大統領選について最近の世論調査の結果からは、オバマ候補がマッケインに僅差で勝ち、マッケイン候補はクリントンにかろうじて勝つであろうと予測されている。 オバマ候補は改革の担い手のように言われているが、民主党大統領候補が誰になるにせよ、現在の有権者の構造からして選挙は接戦になると思われる。
次に講師は大統領選挙において主要な論争点となるであろう、ブッシュ・ドクトリンの再評価、米国のソフト・パワーの減退、中国・インド・ブラジルといったミドル・パワーの登場、そしてグローバル化が米国国内政策に与える影響について分析を加えた。さらに講演では、クリントン、オバマ、マッケインの各候補者の選挙キャンペーンにおける強みと弱みについて、また各候補者のイラク政策、テロとの戦い、国際経済政策、日米同盟に関して政策スタンスの説明がなされた。
最後に、講師は現在の民主党二候補の選挙キャンペーン状況について以下のようにまとめた。
クリントン、オバマの両者ともに、2月5日スーパーチューズデーを過ぎてここまで民主党内でキャンペーンが長引くとは予期していなかった。クリントン候補は、オハイオ州およびテキサス州において女性およびヒスパニック有権者の票を集めて勝利した。彼女は、学歴と収入の低い白人有権者の目には、再雇用機会、健康保険、年金を保障してくれる確かな候補者として映るのである。これらの有権者が民主党候補に求める変化は、クリントン候補がもたらすもので十分であり、オバマ候補は変化の度が大きすぎると感じている。二候補の間で今後民主党指名候補争いのために費やされる資金と時間を考えれば、共和党マッケイン候補の持つキャンペーン運営上の優位性は、民主党にとって不利に働くことがあきらかである。
質疑応答セッションにおいては、民主党大統領候補の外交政策、政策決定スタイルなどについて、参加者からのコメント、質問等が相次いだ。
以上