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2009年度第1回国連研究プロジェクト研究会(議事録概要)NO.2「国連安保理における日本を考える」

May 11, 2009

作成:都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)

1.出席者

北岡伸一(主任研究員)、鶴岡公二(外務省国際法局長)、池田伸壹(朝日新聞GLOBEシニアライター)、岩澤雄司(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、星野俊也(大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)、紀谷昌彦(外務省国連企画調整課長)、坂根徹(日本学術振興会特別研究員)、ジョン・A・ドーラン(海洋政策研究財団)、蓮生郁代(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)、潘亮(筑波大学人文社会科学研究科専任講師)、関山健(東京財団研究員)、都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)

2.日時・場所

4月14日18:30~21:00、東京財団A会議室

3.報告者

(1)鶴岡公二氏(外務省国際法局長)「海賊対象法案の概要」
(2)池田伸壹氏(朝日新聞GLOBEシニアライター)「国連安保理における日本を考える」

<国連安保理における日本を考える>

4.池田氏報告

(1)はじめに

2009年1-3月までの安保理における日本の行動をどのような視点から評価することができるのか。そのための「補助線」を提示するのが本報告の目的。

周知のとおり、2006年末以来、今年1月に日本は安保理に非常任理事国として復帰。2月には、2年4カ月ぶりに安保理議長国を務めた。4月には北朝鮮問題に対応。

紛争の平和的解決、国際の平和及び安全を維持し又は回復するためには、日本は何を成し遂げ、あるいは成し遂げ得なかったのか。

(2)日本での「安保理」報道

今年1月から3月にかけて、日本の新聞・テレビが「安保理」という言葉が入った記事・ニュースをどのくらいの頻度、発行・放送したのか。

1月と3月はその頻度が比較的高く、一方、2月は低い。1月は、日本が安保理に復帰するに際して、安保理改革の動向への関心が高かった。3月については、ほぼすべての北朝鮮問題の報道で、必然的に「安保理」への言及があった。日本が安保理で議長を務めた2月については、1月、3月と比較して大きく落ち込んでいる。

しかし、「各国に電波時計の贈り物」といったとトピックについては、各紙で取り上げられた。これは、遠い存在である国連をより身近なもの、あるいは「ヒューマナイズ」させる効果を持ったエピソードであった。また、2年間という短いインターバルで日本が安保理に復帰したことが活かされた点でもあるだろう。2005年9月に日本が安保理で議長を務めた際、月始の朝食会で日本のシュー・クリームが提供され、各理事国に好評であった。この際のエピソードはあまり報道されることはなかったのだが、報道する側にとって安保理議長国がどのようなものか体験する機会となった。このような継続性が今後も重要であるだろう。

(3)議長国の役割、PRの重要性

ただし、本来の議長職については報道が不十分。「ねばり強い合意づくりに定評があるはずの日本の強み」が成果として伝えられることはあまりなかった。議長国就任前の1月、国連本部で高須大使が記者会見を行っている。この際、内外の記者から質問が集中したのは安保理改革で、そのための日本の意欲を改めて表明する機会となった。

また、政府外務省の側でも、今回2009年2月の議長国就任についてのアピールが不十分であったのではないか。2006年10月、日本が安保理議長国を務めた際には、9月29日に「我が国の国際連合安全保障理事会議長国就任について」というステートメントを発表。ここで10月26日に、平和の定着における女性の役割をテーマとした安保理公開討論を、安保理メンバー外の国と関係する国際機関、市民社会の代表等を招いて開催することを告知(SC5556th Meeting)。今年2月の議長就任の際には、2006年時のような事前のアピールはなかった。

閣僚級が出席するアリア・フォーミュラによる会合を開催して、日本の主張やメッセージを内外に発信する場を設けてはどうか。テーマとしては、平和構築、「人間の安全保障」が考えられるだろう。

国連日本政府代表部のウェブサイトにある「目的」の内容を再検討する必要があるのではないか。安保理改革の早期実現、国連憲章に残存する旧敵国条項の削除、日本の国連分担率の適正化、国連で働く邦人職員の増強など、やや無機質な内容ではないだろうか。もう少し、人類の利益や理想を前面に打ち出すなどの工夫が必要。しかし、ミッション・ステイトメントとしての意味があるこの「目的」のページは、数年前には代表部のサイトにみられなかった。このページが作成されたこと自体は評価するべき点である。

(4)日本の貢献

1)安保理の「実効性」、「信頼性」、「一体性」の確保。今年1月、日本が安保理に復帰して間もなく直面したガザ問題。決議採択を迫るリビアとそれに消極的な米国の間で、日本が果たした役割をどのように評価するか。1月8日、米国の棄権があったものの、賛成多数で決議が成立した背景で、日本の努力は安保理の分裂を回避することに集中。ここから得られる教訓は何か。安保理で非常任として日本ができること、できないことを見極めることが重要。

また、総会と安保理の関係においても、日本はどのような役割を果たすことができるのか、検討が必要。たとえば、1月16日、総会(緊急特別会期)でもガザ問題で決議が採択。その他には1月16日のソマリア決議。ほんらい、国連行財政の決定権限は総会にあるが、安保理でAMISOMに対する国連の財政支援のあり方を討論しそれが決議に反映されている。総会と安保理のすみ分けをどのように考えるべきなのか、日本の立場を具体的に明らかにすることが求められるだろう。

2)現在、日本は安保理で、文書手続作業部会、PKO作業部会の議長を務めている。また、アフガニスタンと東ティモールのリード国を務めている。前回も文書手続作業部会の議長国を務めており、この際、安保理の透明性、開放性の向上を図る目的から、安保理作業方法ハンドブックの作成を日本が主導した。しかし、透明性、開放性が向上した結果、議論の形式化・形骸化が指摘されている。今回、日本はどのような成果を上げることを目標としているのか。そのために、現在どのような努力がされているのか。これらの点への注目が必要。

3)新しい問題への安保理の取組。たとえば、「人間の安全保障」、人権概念の変化、人道的介入。環境、気候変動、生物多様性。軍縮。平和構築。ICC。通常のマターに加えて、上記のうち、どれだけ多くの問題で日本は安保理をリードできるのか。また、日本だからこそできる役割は何か、検討が必要。

(5)安保理改組と日本

周知のとおり、2月19日より、安保理改革に関する政府間交渉が総会で開始。現時点では、常任、非常任の両カテゴリーの拡大を日本は主張。それに反対する動きとして、UFCの77カ国が結束を強化。

同時に、4月2日に会合が開催されたように、今後、本格的に「G20時代」に突入していくだろう。そのなかで、国連の存在意義はどのような点にあるのか。また、国連システムのなかで、安保理を改革する意義はどこにあるのか。総会との関係はどうあるべきなのか。これらは国際法、国際機構論上も重要な課題で、改めて日本の立場を明らかにしてくこと、日本のアイディアの有用性を提示していくことが重要である。

(6)内政、国内行政と安保理

安保理で閣僚級の会合が開催される際、日本のプレゼンスを高める上でも、大臣が出席することが重要。そのための工夫が必要。現在、国会はスケジュール闘争のなかで外相の取り合いになる傾向がある。認証官など新たな制度でなくとも、与野党間の合意で克服できる面もある。また何よりも国民の理解と支持が重要。

東京とニューヨークの関係のあり方。日本は「電報主義」で、政府・本省の決裁を経てからでないと、迅速に態度表明ができない。時差のインパクトも大きい。安保理のように国際の平和と安全の問題について一分一秒を争う場で、このような対応で良いのか改めて検討が必要。

米国ではこれまでリバタリアンニズムの政権が長く続いてきた。連邦政府への反発、さらにそこから国連分担金拠出の反対、国連への行財政圧縮要求。それとは逆に、オバマ新政権は国家予算を活用していこうという姿勢。しかし、国連への態度はまだ不明確。国連に対してさらに行財政圧縮を求めるのか、あるいは国連を活用しようという姿勢なのか。日本が安保理にいるこの2年間でその萌芽が明確になるだろう。日本も米国と同様、国連の高財政負担国であり、米国の動向への注目が必要。

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