■ 政策提言「新しい日本の安全保障戦略 ― 多層協調的安全保障戦略」はこちら
■English Version→ Japan's New Security Strategy: Multilayered and Cooperative Security Strategy
東京財団は、10月8日、「新しい日本の安全保障戦略 ― 多層協調的安全保障戦略」と題する政策提言を行いました。これは、当財団主任研究員の北岡伸一東京大学教授と上席研究員の田中明彦東京大学教授が中心となって行った「安全保障研究プロジェクト」の成果です。
本提言では、9.11テロ以降日本をとりまく安全保障環境が大きく変化する中で、国益追求のための国家戦略を踏まえ、外交、経済、文化を含む包括的な安全保障戦略を提示しています。
官民でこれまで積み重ねられてきた議論を踏まえながら、(1)日本の国家戦略を確認し、(2)日本をとりまく安全保障環境を分析した上で、(3)新たな安全保障戦略を4つの視座から提示します。そして(4)それを達成するための態勢作りを提唱しています。
これらの提言は、日本が国際社会の中で埋没する恐れすらある状況の下で、日本の国益を守るために必要最小限の施策と言えるものです。したがって、日本の国益を大きく増進させるという視点から見れば、より先鋭で意欲的な戦略を考えるための土台となるものです。
本提言では、日本の取るべき戦略を、(1)日本自身の防衛力、(2)日米同盟、(3)地域安全保障、(4)国際平和協力という4つの視座に立って議論していますが、これらは独立した戦略ではなく、相互に連関したものであることは言うまでもありません。
その核心部分は、多機能弾力的防衛力の具現化、憲法解釈の変更、日本版NSCの設置などであり、より具体的な施策として、インド洋海上給油活動の継続、政府開発援助(ODA)の増額などが提唱されています。
政権選択の岐路に立つ日本において、本提言が、純粋に日本の国益を考慮した安全保障の議論を喚起する契機となることを期待してやみません。
東京財団政策研究部 片山正一