「現代アメリカ研究プロジェクト」 では、大統領選挙を通じてアメリカ社会のさまざまな側面を分析してきました。この度その研究成果の一部を、 『オバマ大統領を支える高官たち-政権移行と政治任用の研究』 (日本評論社、2009年)という新著の形で発表しました。
プロジェクトリーダーである久保文明上席研究員(東京大学法学部教授)の他、足立正彦(住友商事総合研究所シニア・アナリスト)、菅原和行(釧路公立大学経済学部准教授)、梅川健(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、のメンバー3名が執筆を担当しました。
2008年のアメリカ大統領選挙は、日本でも大きな関心を集めました。民主党の予備選挙においてオバマ、クリントン両候補が大接戦を演じたこと、黒人候補と女性候補のどちらが勝っても史上初の大統領候補が誕生すること、ヒラリー圧勝の大方の予想に反しオバマが民主党候補の指名を勝ち取ったこと、そして最後には初の黒人大統領が誕生したことに、アメリカはもちろん、全世界が興奮したのです。
未曾有の経済危機の中で大統領に就任したオバマは、経済に限らず、環境・エネルギー・教育・医療などの内政、イラク・アフガニスタンなどの外交・安全保障においても、大胆な施策を次々に打ち出し、メディアを賑わしています。
その陰で、選挙で大統領が選ばれてから正式に就任するまでに2ヶ月半を超える「空白」の期間がありこの間に政権移行が行われること、大統領は閣僚をトップに3,500名に上る高官を任命すること、さらに全員の任命を終えるのにゆうに1年を超える年月を要することなど、政治の仕組みについてはあまり知られていません。
本書は、アメリカ政治に関する関心が高まった現在、政権移行と政治任用を本格的に研究した成果をまとめたものです。
前半の第1部「新政権の成り立ち」では、第1章で久保上席研究員が「アメリカの民主主義と政権移行」、第2章で菅原氏が「アメリカ政治任用制の過去と現在」、第3章で梅川氏が「過去の政権移行はどのように行われたか」、そして第4章で足立氏が「オバマ政権の特徴」を分析します。
後半の第2部「オバマ政権Who’s Who」では、オバマ政権の成立過程を追いながら、2009年3月27日時点の政権の全陣容を詳細にわたって解説します。この第2部は当プロジェクトがこれまで3回にわたり作成してきた 「人名録」 の第4版に相当するもので、研究者のみならず実務に携わっている方々にもハンディなものです。
本書がアメリカの政治制度ひいてはアメリカ社会に関する理解を深めるとともに、オバマ大統領の政策運営をウオッチする上で大いに役立つことを確信します。
そして、当プロジェクトでは、今後もオバマ大統領の政策運営を通して、現代アメリカ社会を分析します。その成果はホームページ、書籍、講演会、フォーラムなど多様な手段を通じて発信していきます。今後の成果をご期待ください。
(片山正一 プログラムオフィサー)