最新のオバマ大統領の週間支持率(ギャラップ社)は41%であり、5月初旬と比べて9ポイント低下している。就任3年目の支持率としては、再選を果たせなかったジミー・カーター(1977-1981年)よりはましであるものの、3年目の支持率50%以下で再選されたロナルド・レーガンおよびビル・クリントンよりも低い。
オバマの支持率低下の背景にあるのは、高止まりする失業率である。ギャラップ社が定期的に調査している懸案争点(most important problems)のトップは失業/雇用(39%)であり、連邦政府予算/財政赤字(12%)を大きく上回る(9月調査)。EUの金融不安が高まる中、今後1年の間に雇用状況が大きく改善するとは考えにくい。オバマの再選は絶望的なのだろうか。
雇用不安と政治不信の高まりを背景とする民主党への逆風は強いので、もしも共和党が、そこそこに強力な候補を擁立しさえすれば、オバマは苦戦を強いられる情勢だと言える。共和党にとっては、2004年や2008年のような逆風の局面では支持基盤の保守層を固めるのが定石となるのに対し、2010年以降の追い風の局面では、支持政党なし層や一部の民主党支持層をも取り込む攻めの選挙戦術が可能となる。もしも共和党予備選挙において、支持政党なし層やイデオロギー的に穏健な有権者にアピールする候補が勝てば、オバマにとって特に手強いであろう。
こうした中道・穏健な候補が、前マサチューセッツ州知事(2003年―2007年)のミット・ロムニーである。9月のギャラップ調査によれば、もしもロムニーが大統領候補に指名されたら必ず投票するまたは投票を検討するが62%であり、オバマ大統領の54%、テキサス州知事のリック・ペリーの53%を大きく上回る。
選挙分析における重要な指標の一つが、有権者からの反感度・ネガティブの高さである。上述のギャラップ調査では、「絶対に投票しない」というネガティブが、オバマは45%、ペリーは44%に達する。これに対しロムニーについては35%にとどまる。2008年大統領選挙における共和党予備選挙の有力選挙であり、知名度が比較的高い割には、ネガティブが低いのがロムニーの強みである。
ロムニーは、全米最難関のハーバード・ビジネス・スクールを成績上位5%で終了し、名門コンサルティング企業のベインズに採用され、そこからスピンオフした投資会社の大成功で巨万の富を得ている。
アメリカの大統領選挙予備選挙においては、最有力と目される候補に雪だるま式に政治献金が集中し、その他の候補は資金繰りで脱落を余議される。ところが、個人資産に恵まれた候補は、2008年大統領選挙の共和党候補に指名されたジョン・マケインの例にみられるように、人気が低迷する局面でも、チャンスが巡ってくるまで予備選挙を戦い抜ける。予備選挙が長期戦となった場合は、ロムニーの巨額の個人資産がものを言うこととなろう。
経済が争点の2012年大統領選挙においては、イラク戦争が中心争点であった2008年の予備選挙とは異なって、ビジネスの世界での成功という経歴はたいへん有利である。徹底したデータ分析に基づく確かな経営手腕は、起業や企業再建の実績みならず、マサチューセッツの財政再建(30億ドルの負債解消)やロムニーが実行委員長だったソルト・レーク・オリンピックの成功でも証明されている。