9月1日、ユタ州ソルトレークシティで開催されたフリーダムワークス(FreedomWorks)主催の「Tea Party Debt Commission」の初会合に出席してきた。フリーダムワークスはティーパーティー系組織の中ではもっともワシントン色が強い団体として知られている。いわば草の根のエネルギーとワシントンをつなぐ回路という感じだろうか。この会合は、集会というよりかは勉強会に近く、当初フリーダムワークスは50人程度の出席を見込んでいたに過ぎなかったが、最終的には250人ほどが集まり、大盛況となった。
ユタ州はティーパーティー運動にとって戦略的要所である。昨年の中間選挙で穏健な保守派の現職上院議員ボブ・ベネットをティーパーティー運動が推したマイク・リーが共和党予備選で敗り、運動の腕力を見せつけた場所でもある。来年の選挙ではオーリン・ハッチ上院議員が再選をねらうが、ティーパーティー運動は老練なハッチが十分に保守的ではないとして、再選を阻止しようとしている。「Debt Commission」にもハッチ事務所から偵察要員が来ていたようだ。
「Debt Commission」は保守派の集会らしく「忠誠の誓い(Pledge of Allegiance)」と祈りで幕を開けた。一般に宗教色が希薄だとされるティーパーティー運動なので、祈りは若干違和感があったが、その場では当然のこととして受け入れられていたようだ。ユタはモルモン教の発祥の地として有名だが、祈りがモルモン教のものなのか、そうではないのかを確認することはできなかった。ティーパーティー運動は実は宗教右派とかなりの程度重複するという見方もあるが、この点はさらなる検証が必要だろう。
次いでマット・キビー(フリーダムワークスCEO)が登壇し、この会合の目的を説明した。キビーは、「Debt Commission」を、2012年に向けて政策的成果を上げるための理論武装をする会合であると位置づけた。事実、この会合では、米連邦議会における予算審議の過程や財政赤字を削減するための具体的な方策に関するかなりテクニカルな議論が繰り広げられた。
「Debt Commission」は、ユタでの会合を皮切りに、全米各地で予定されている。続いてキビーはこう述べた。ティーパーティー運動1.0は「オバマケア(医療保険制度改革)」に反対すること、ティーパーティー運動2.0が2010年の中間選挙に積極的に関与したことだとすると、ティーパーティー運動3.0は具体的な成果を上げることだと。言い換えれば、「Debt Commission」の目的は、草の根のエネルギーをワシントンにおける政治力に変換し、連邦政府の支出を徹底的に切り詰め、政策レベルでティーパーティー運動の存在感を示すことにある。
これは時として宗教右派がそうであったように、選挙の時だけ動員されるコマになるのを防ごうとする動きでもある。2010年中間選挙直後には、ティーパーティー運動の持久力を疑う声もあったが、着実に2012年に向けて影響力を行使するための地歩を固めつつあるようだ。