東京財団研究員
大沼瑞穂
2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博と国家の威信をかけた2大プロジェクトが終了した中国にとって、2011年は、国内問題に目を向けていかなければならない試練の年となるだろう。人民元の切り上げ問題はもはや中国だけの問題ではなく、グローバルな問題となっている。中国は、日本のプラザ合意後の二の舞は踏むまいとの認識の下、外国からの圧力には屈しないとの姿勢を示しているが、果たして、人民元の問題イコール外国からの圧力の問題なのだろうか。外国からの圧力を言い訳にして国内の経済制度改革に手をつけないとするならそれは、大きな間違いである。
中国の経済成長は、経済制度改革とセットで成し遂げられなければならない。というより、それ以外に維持可能の道はないとも言える。安価な人件費と輸出に頼った成長は今後ますます難しくなってくる。為替制度に始まり、多くの経済制度がマーケットを無視して、正常に機能していないため、制度疲労を起こしている。早急な経済制度改革が必要だが、政治改革同様、改革への意欲は感じられない。
5年に一度開催される党大会が2012年と翌年に迫り、執行部では、鄧小平、江沢民、胡錦涛と続いてきた権力の平和的移行をスムーズに行わなければならないとの焦りがある。人民元の急激な切り上げや早急な制度改革は国内で混乱を生むきっかけとなり、政治の混乱も招きかねないとの慎重な態度が見え隠れする。事実、現在の執行部の体制をもう一期継続させる、副首相は選挙制で選ぶべきだといった様々な声が挙がっている。
第四回日中政策勉強会では、今後の中長期的な中国経済についての勉強会を実施したが、第五回は、2011年、今年の中国経済の景気動向と市場環境について、富士通総研の柯 隆主席研究員からご講演いただき、その後、中国株、不動産、為替の問題など活発な意見交換を行った。
勉強会の議事録は、こちら→→ <第5回日中政策勉強会>