中国の政治改革の現状と今後
東京財団研究員
大沼瑞穂
アフリカのチュニジアで始まったジャスミン革命は、エジプト、リビアに飛び火し、他の独裁的な体制を敷く中東諸国でも市民からの民主化要求が高まっている。そして今、アジアで中東情勢に一番敏感になっている国は、おそらく中国であろう。ジャスミン革命以後、中国においても、民主活動家たちは市民たちに4週間に渡りネットで民主化集会の呼び掛けを行った。しかし、中国政府はネット規制を強め、多数の警官などを配置することで人々の集会を阻止することに成功し、民主活動家の逮捕を加速させている。3月に開催された全国人民代表大会(全人代)では、北京で厳戒態勢が敷かれ、大会では、共産党の正当性が前面に出され、中国は欧米式の複数政党制の導入や三権分立の道に進むとの考えはないとの意思が確認された。
独裁的な政治体制に若者の失業率の高さ。さらに、インフレによる物価上昇など中東諸国と中国の抱える問題は同じだ、と見る識者もいるが、一人っ子政策を70年代後半より続けてきた中国ではむしろ今後労働者人口は減少していく。80年代、90年代に爆発的に増加したイスラム諸国とは人口ピラミッド構造は異なる。さらに、インフレ懸念は高まっているものの、年9%の経済成長という驚異の成長率は中東諸国とは異なり、人々に豊かさの実感も与えている。当局の厳しい締め付けとともに、そうした社会的背景もあって、一般民衆にまで民主化の波は訪れていない。しかし、中国は今後も、世界の動きやチベットやウイグルなどの少数民族問題等に連動して民主化への対応に苦慮せざるを得ない状況を幾度となく迎えるだろう。
2月に開催された第六回日中政策勉強会では、普段はアドバイザーとして参加頂いている東京大学の高原明生教授より「中国の政治改革の現状と今後」をテーマにお話頂き、その後、全人代改革や胡錦濤政権の評価などについて活発な意見交換を行った。
勉強会の議事録は、こちら→→ <第6回日中政策勉強会>
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