政策提言
「日本の水源林の危機 ~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」
日本の国土の67%を占める森林はそうした水資源の源であり、その売買については公共インフラ保全の観点から慎重な対応が必要です。しかし、現行制度では、水資源管理と森林保全は切り分けて行われており、制度整備は極めて不十分です。
東京財団では、森と水の循環メカニズムに基づく統合的な保全のための制度が緊急に必要と考え、地下水と水源林保全に関する重要論点と、早急に必要と考えられる具体策について政策提言をまとめました。
★ 政策提言全文
提言書の骨子
<背景:グローバル資本の参入>
日本の森林はいま「買い」の分野と目され、内外の様々な民間資本による林地購入が進みつつある。こうした動きはまだ表面化していないものの、関係者の間では様々な事例が話題に上っている。2008年には、例えば三重県などの大規模山林で海外資本からの買収交渉の話が聞かれた。
<問題点:ルールの不備>
我が国の林業は、国際的な価格競争にさらされ長期にわたって低迷が続いた結果、植林放棄や不当に安い林地価格が大きな問題となっている。森林法による現行の監督制度も自治体において十分機能していない点も多い。総合的な地下水のかん養と利用について規定した法律もない。
ルール整備が不十分な中で森林売買が進行すれば、国として自国の森林資源・水資源を管理することが困難となり、国土保全や国民生活の安定という安全保障面で、大きな影響を受けることが予想される。
<提言:「重要水源林」の売買ルール整備>
国民の安全・安心のためには、市場経済における短期的利益の追求を前提としつつも、長期的な国益の視点に立った森林売買ルールの整備が不可欠である。
植林放棄是正を急ぐとともに、「重要水源林」の指定・売買ルールの見直しなどの、制度整備が早急に必要である。
【提言に関するお問合せ】
東京財団 政策研究部 吉原祥子
電話:03-6229-5643 Email:yoshihara@tkfd.or.jp