議会と住民との関係に着目
約2年間の「地方自治体のガバナンス研究プロジェクト」の取り組みから地方議会の改革が急務であるとの認識に至った。地方分権の時代において、権限や財源が地方に移行される。自治体の業務拡大に伴い、議決機関である議会の裁量範囲は拡大することが予想される。議会の仕事量は必然的に増える。これまで以上の議会の活動が期待されるが、多くの議会が準備万端とは言えないのではないだろうか。議会の活性化が叫ばれているのは、このような時代の変化に対応しきれていない現状への危機感である。
これまで議会の主たる役割は、首長(行政)の提案について適切な判断することであった。首長の原案に対しての賛否を表明するだけで十分であった。個別の議員や会派からの要望が首長原案にどれだけ反映されているかが、賛否を決める重大要素であった。議会の視線は首長に向けられていた。首長原案を採決するかについて、議会は責任を感じていた。議会は、首長に対して責任を負っていると思い違いをしていた。
議会が責任を負うべき対象は、間違いなく住民である。住民から直接選挙で選ばれている議会は住民に対して説明責任を果たさなければならない。多くの議会は情報公開や住民説明に消極的であった。だが、自治体が行う業務が増え、またその重要度も高くなる時代においては、議会が自らの議決理由を明確に住民に説明しなければ、住民からの信頼は獲得できない。住民からの信頼が不満に変わると、引いては議会不要論に発展することも否めない。現行の二元代表制を弱体化することになる。議会はこれまで以上に住民に対して情報を公開し、審議や議決についての説明責任がより一層求められる。この議会と住民との関係強化が、「地方議会の改革プロジェクト」が最も重要視する点である。
第一回研究会報告と今後の展望
上記の問題意識に基づき、4月24日に第一回研究会を開催した。今年度から北海道栗山町議会事務局長として議会基本条例を始めとする議会改革に取り組んできた中尾修氏を研究員に迎えて研究調査を実施する。中尾研究員から、議会改革に取り組む上での指摘を下記のとおり報告があった。
・住民の議会への直接参加(参考人・公聴人)は、議員の見落とした視点を付加する
・議会がひとつの機関として活動することは、首長と対峙する上で効果的である
・議員は選挙で選出されていても、全権を負託されているわけではない
・議会討論のプロセスを公開することは、結論同様に重要である
具体的な研究調査方法としては、議会基本条例を制定した議会に簡易なアンケート・ヒアリングを行う予定である。制定の動機・きっかけや過程への住民参加、制定後の議会の活動状況等について検証する。
(文責:赤川貴大)