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研究会報告:議会基本条例の分析(2)

June 26, 2009

第3回研究会概要

日時:2009年6月22日(月)14:00-17:00
場所:東京財団E会議室
出席者:
木下敏之  東京財団上席研究員
福嶋浩彦  東京財団上席研究員
中尾修   東京財団研究員
赤川貴大  東京財団政策研究部プログラム・オフィサー
本田正美  東京大学大学院学際情報学府博士課程
武田祐也  早稲田大学大学院政治研究科政治学専攻博士課程

議論・意見交換の内容

2009年4月現在で制定されている48市町村議会にアンケート用紙を5月下旬に送付した結果、ほぼ全議会から返答があった。これも議会改革のひとつである情報公開についての意識の高さが示された証左と考える。

アンケートの分析作業(6月15日~19日)と同時進行で、中尾修研究員が30議会事務局に電話でのヒアリングを実施した。施行後時間が経過していないこともあり、議会基本条例で定められた条項が実施されていない議会が大多数であった。中尾修研究員からは、検討中または実施要綱作成中との返答の議会については、「制定先行型」との指摘があった。

「地方議会の改革プロジェクト」としては、議会基本条例を地方議会改革の試みとして高く評価している。今後より多くの議会が制定することを歓迎する基本姿勢で調査分析に着手している。議会基本条例を制定するに当たっては、できるだけいいものを作るべきであり、そのためには、他議会の先行事例を検証し、熟慮が必要と考える。特定の議会や議会基本条例を誹謗中傷する意図はなく、建設的な提案・提言を目的とする。マスコミ・一般市民から「議会不要論」を筆頭とする地方議会批判を踏まえて、叱咤激励の意味での提言を目指す。

廣瀬克哉氏(自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表・法政大学教授)は、議会基本条例を「議会に関する基本的事項について定めた条項」と定義している。また、議会の規模や改革課題の重点に対応して多様性が見られる一方、基本項目としては、(1)市民参加、(2)議員討議、(3)情報公開が挙げられるとの報告がある。

「地方議会の改革プロジェクト」では、上記3項目を具体的な条文で比較分析を行っていく。ただ、議会基本条例の核心部分は、市民参加と情報公開にあると考えている。栗山町議会で用いられている“一般会議”の開催、参考人・公聴会制度、請願・陳情者の委員会での発言等が市民参加のチェック項目となる。一方、情報公開に関しては、委員会の公開、議会報告会の開催、議案への賛否表明等が挙げられる。調査対象とした48議会基本条例の中には、いずれの項目にも触れず、議会の権限を強化した条例も見受けられた。これは議会の首長(行政)への権限強化を図ることで、政治的存在感を高めようとする従来型の地方政治の姿を踏襲したものであり、自治の力を高めるための地方議会改革とは一線を画している。

なお、分析表は、北海学園大学福士明教授が2008年に作成した「議会基本条例比較」をベースに追加の助言をいただき作成した。

やや蛇足的ではあるが、分析作業に携わった本田正美、武田祐也両氏から“ユニーク条例”として紹介があった。議員活動、議会運営の実態が垣間見られる。

「議員は、市職員、臨時職員等の採用に関し、一切関与してはならない。」 (N市議会)

「議会における質問は、議員固有の権限であり、議員は質問作成に当たり、町長等に代筆行為の要求をしてはならない。」 (K町議会)

「市議会は、議員報酬の改定に際しては、その報酬の額が、議員の職務及び職責にふさわしいものとなるよう、市議会としての意見が反映させるよう努めるものとする。」 (S市議会)

本日の研究会での議論とより深めた分析を中間とりまとめとして、7月1日の 「政策懇談会 地方議会の改革 ニセ議会基本条例を斬る」 で報告する予定である。

さらには、年末を目途に「議会基本条例“東京財団”モデル」として、いくつかの必須項目の提案を目指す。また、「行革派」の手法を用いて、地方議会議員の活動実態調査を実施予定である。


(文責)赤川貴大

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
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