地方議会改革-地方分権から地域主義-
地方議会改革の必要性を理論的、実践的に説いた「地方議会改革マニフェスト」が日本経済新聞出版社から発売になった。多くは「日経グローカル」に寄稿した論文に加筆修正したものが中心だが、井上明彦氏が丁寧に編集・執筆され、地方分権改革から民主党政権での「地域主権」に至るまでの地方議会の改革の変遷と方向性が具体的に説明されている。
特に、当財団研究員の中尾修氏が執筆の「北海道栗山町議会の挑戦」は、議会事務局に長年務めてきたからこそ告白できるありのままの議会の姿が映し出されている。しかし、従来型の議会や議員への批判や不平、ぼやきだけではない。議会基本条例というひとつの改革ツールを使っての取り組みで議会と議員がどのように変わったのかを鮮明にしている。
節の表題だけを紹介すると、(1)住民に開かれ、行政に強い議会へ、(2)「議会報告会」は自治推進の仕掛け、(3)議会基本条例の誕生と展開、(4)基本条例は議会運営の最高規範、(5)総合計画、住民巻き込み大幅修正、(6)合併問題、調査を基に住民と議論、となっている。
身の丈の改革
中尾研究員いわく議会改革の基本は、情報公開と住民参加に尽きる。それは当然と言えば当然のことだが、このことを具体的な取り組みの段階になると躊躇してしまう議会は少なくない。住民と向き合う覚悟が必要である。その前段階として、覚悟を決めるまでの無数の試行錯誤が不可欠である。一朝一夕に議会が変わることはない。議会基本条例の制定で議会が変わることはない。だが、議会基本条例をひとつの目標として掲げ、現在の取り組みを見直す機会にはなる。議員が議会の構成員として冷静に分析し、自らを自治組織の責任者であるとの認識を強くすることである。現実を直視することから始めなければならない。
他の先進的な議会との比較においても、総合計画や合併問題への取り組みなど栗山町議会の取り組みは突出している。しかし、これらは首長/行政への単なる対抗心から行っているのではない。議会と住民の身の丈に合った取り組みなのである。
機関委任事務の廃止に象徴される地方自治の大転換から約10年が経とうとしている。旧態依然とした首長/行政依存の議会から脱却できる議会とそうでない議会の差はますます広がるであろう。その差は単なる地方議会の差ではなく、その地方政治や経済に否応なく影響を及ぼすことは間違いない。中尾研究員のおわりの言葉「分権を勝ち取るのは議会」に感化した地方議員の奮起を期待したい。
<文責:赤川貴大>