概要
2010年1月23日、葉山町教育総合センターで開催された「葉山町議会基本条例説明会」に参加しました。会場が町役場に隣接していることもあり、駐車場の確保もされており、利便性は高い場所でした。また、会場前には議員が係員として車の誘導や入場の案内を務めていました。住民の参加者は老若男女約40名でした。
まず、開会にあたり、議会運営委員会委員長より開会の辞があり、続いて議員の紹介、議長のあいさつがありました。その後、町民との意見交換として、議会基本条例の制定経緯をテーマに質疑応答が実施されました。
議会基本条例とその基本的考え方をまとめた資料が配布され、説明議員からは、議員報酬の多寡や議員活動が選挙直前に集中しているとの印象など、町民の議会への目が厳しくなったことが、ひとつの議会基本条例制定のきっかけとなったとの説明がありました。また、地方分権の流れが不可逆的となる中、これまでの議会活動を見直す機運も高まったことが背景にあるとの説明もなされました。ただ、そのような背景が影響したためか、条例の項目については、全議員の合意を原則として制定に当たったこと、さらに地方自治法の範囲を逸脱しないことに留意したとの説明がありました。また、参考とした議会基本条例は北海道栗山町議会と神奈川県湯河原町との紹介がありました。
町民からは、議会改革の取り組みとして議会基本条例を制定したことや説明会を開催したことについては、おおむね評価と好意的な受け止め方をする意見がだされました。ただ、制定経緯については、議会の組織防衛を目的とした政治的パフォーマンスではないか、期待される成果が不明確であるとの指摘がありました。また、基本条例の前文には、議会としての町のビジョンや方向性を示す迫力のある文章が望ましいとの意見が複数の参加住民から寄せられました。また、議会・議員の活動の透明度を高め、信頼性を増すためには、積極的に政務調査費の原本を開示することを求める意見も出されました。
所見
危機感は全議員に共有できたことは、改革への第一歩であると考えられます。地方議会改革の必要性を心底感じている議員は全国的にはまだ少数派なのが実態です。その点においては、葉山町議会の取り組みは高く評価できます。しかし、地方自治法に明記されていることは、地方自治体が当然として実施することであり、誇ることがらではありません。住民からの陳情提出者の議会意見陳述を求める要望に対して、地方自治法が定める参考人制度での対応しか制度的にできないと議員が答弁するなど、せっかくの住民と議会の距離を縮める絶好の機会を逃している印象を受けました。
基本条例制定の背景や意義について、参加住民から議員一人ひとりの見解を求められましたが、数名の議員は発言を見送ったことは残念な状況としか言いようがありません。旧来の自らの支持者や後援者への説明で議員としての責任を果たしていると考えているならば、議事機関である議会の構成員としての資質に疑問が残る対応と考えられます。
地方議会の改革プロジェクトでの分析結果に基づくと、栗山町と湯河原町の議会基本条例の内容は本質的には異なるものであり、葉山町議会がどこを参考にしたのか不明です。
今回の説明会をひとつの契機に住民との対話を基礎とした議会活動が実践されることが期待されます。
<文責:赤川貴大>