概要
松江市議会は、初めての議会報告会を2010年1月21日から15日間28か所で開催しました。2月3日15時開始の白潟公民館の会と4日19時開始の乃木公民館の会に参加しました。
この議会報告会は、松江市議会基本条例第7条に基づくものとし、議員と市民が市政全般にわたって情報及び意見交換を図る場と位置付けています。34名の議員を機械的に1班6~7人の5班に編成し、市内の28の公民館区を対象地区として開催しました。各班は5~6地区の担当となります。報告内容は、議会報告として、(1)議会のしくみ、(2)議会基本条例、(3)平成21年定例議会の報告、(4)質疑応答です。その後市政や議会運営についての意見交換も行いました。配布資料は、(1)~(3)を整理した30ページの冊子「平成21年度議会報告会‐市民の皆様に開かれた議会をめざして‐」とアンケート用紙等です。
議会のしくみについては、市議会の役割として、(1)市議会とは、(2)市議会と市長を数行で簡潔にまとめた文章があり、市議会のしくみとして、(1)市議会議員、(2)議長と副議長、(3)会派、(4)議会事務局について図表を含め記述されています。また、市議会のしごととして、(1)議決、(2)選挙、選任・任命同意、(3)市政のチェック、(4)意見書・要望書の提出と決議が説明され、市民の皆さんと市議会の項目では、(1)請願と陳情、(2)請願と陳情審議の流れ、(3)傍聴、(4)市議会活動の記録、(5)議会放送について概要を説明しています。さらに、議会のあらましとして、(1)定例会と臨時会、(2)本会議、(3)委員会、(4)議案が成立するまで、(5)委員会の名称と所管事項、(6)議会活動(議会の開催と会期、委員会の開催状況、議決状況、議員提出案件、請願・陳情)が、図表で分かりやすく作成されています。
議会基本条例については、経緯や目的、概要と条文全文が明記されています。また、定例議会の報告としては、定例会ごとに主な議決案件(6月定例会は6案件、9月定例会は5案件、12月定例会は5案件)について、それぞれ数行で概要と予算額が明記されています。
白潟公民館へは約15名の市民の参加がありました。7名の議員が市民と向かい合う形で着席していました。一人ひとりの議員から自己紹介があり、議会報告が行われました。
意見交換では、松江国際文化観光都市建設法に基づいた観光政策の実施状況や道路・橋梁・河川等の予算、市内の交通網、近隣町との合併など多岐に及ぶ意見・要望が市民から出されました。説明の途中で私見として議員が発言した議会事務局職員の増員についても市民から行政職員総数管理の視点からの意見も出されました。また、配布した資料には、議員の任期について明記されているが、議長の任期については触れていないことにも市民から質問がありました。
乃木公民館には、約10名の市民の参加がありました。白潟公民館同様に資料に沿って議会報告が行われました。この会の担当議員は、明瞭かつ自身の言葉での説明で市民の理解も深まったものと推測されます。市民との意見交換では、市立病院の跡地利用や開府400年事業終了後の実行委員会の運営についてなど具体的な政策提言もありました。また、身の回りの問題だけでなく、国と地方の長期債務残高についても危機感を実感しながら議会活動に尽力してほしいとの意見も市民から表明されました。
雑感
松江藩の城下町を基礎に市制施行による周辺集落の合併、さらに平成の大合併を経て、現在の松江市が形成されています。その影響なのか、議員の出身地域意識が強い印象を受けました。意見交換においても、観光政策や実施状況に多くの時間が費やされていました。歴史的な背景を踏まえると、多くの市民が共通のアイデンティティを確立するためには、松江城を核とした観光とその波及効果に期待することは理解できます。また、その期待を具体化する市全体の均衡ある発展は、多くの市民が要望するところでしょう。一方で市民の無償ボランティア活動として小学校の運動場の芝生の維持管理などに取り組むなど、自立の精神と行動力が強いこともうかがえました。すでに何度か議会報告会を経験したため、議員の多くは自信に満ち溢れて表情でした。
議会報告会の実施については、市民から歓迎されていました。ただ、細かな方法について、市民から開催時期・時間・場所等について意見があり、それは次回の参考とすることが望ましいです。若干気にかかったのは、会場には案内表示がない、または少ないことです。偶然にも公民館に立ち寄った事前に告知されていない市民にも参加を呼び掛けることも重要ではないでしょうか。
なお、議会事務局職員からのヒアリングを実施したところ、1月開始に向けて実際に準備作業に取り掛かったのは11月だったとのことでした。短期間に議員だけでなく、公民館区の関係者との調整や市民への告知、資料作成等、年末年始の多忙な時期にも関わらず実施できたことは、松江市議会の財産となるだけでなく、他の自治体議会の参考となると考えます。
<文責:赤川貴大>