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北海道栗山町議会の議会報告会調査レポート

February 24, 2010

概要

2010年2月15日~20日の6日間にわたって実施された第6回栗山町議会の議会報告会の南町内会館・日出生活館・12区会館の3か所に参加しました。配布された説明資料は、「議会報告会」と題した10ページの冊子と昨年(2009年)の議会報告会で住民から提示された意見・要望に対しての回答書です。「議会報告会」は、報告事項と資料の二部構成となっていました。意見・要望に対しての回答は、道路補修や合併問題、町職員の研修、町長の公用車、指定管理者制度など多岐に及ぶ26項目について行政からの回答を簡潔に記述されています。

参加した3会場全てで、議員も参加住民も床に座布団を敷き座る形体を基本としていました。パイプ椅子やソファも用意されており、和やかな雰囲気が演出されていました。初めに会場の地区長からの挨拶と趣旨説明がありました。報告事項として住民が強い関心と身近な問題と議会が考えた4項目(養護老人ホーム民営化・給食センター調理業務民営委託・赤十字病院の状況・議会モニター)について、それぞれ紙1枚に経緯や可否理由、各議員の賛否表をまとめていました。

配布資料だけでなく、会場には主要な報告事項を図表で示した議員手作りの大型パネルも用意されていました。養護老人ホーム民営化による運営費の比較表や給食センター調理業務を民間委託したケースの運営組織図は、議会が議決するに至った基本的な考え方や視点を住民にわかりやすく丁寧に示す最適なものでした。その他の報告事項についての議員の説明と答弁が明瞭であり、理由にも説得力を感じました。行政が提示した原案には明確に示されていない経費(人件費・維持修繕費等)を具体的な数字と年数を議会の調査で指摘して、それぞれ可否の結果に至ったことが理解できました。

発言する議員も参加町民もマイクを利用せず、自声で話しをしていました。マイクのスウィッチのオン・オフ確認や質疑応答の間に生じる1秒にも満たない空白の時間も会全体の雰囲気を緊張と集中を維持するためには必要と考えた結果だったのでしょう。 多弁でマイクを握ると放すことを忘れる議員が珍しくないですが、このようなちょっとした工夫が、議会と町民の距離を縮め、忌憚のない意見交換ができる秘訣のような印象を受けました。

町民との意見交換では、町内巡回バスの運行状況や除雪、鹿をはじめとする有害鳥獣による被害など詳細多岐にわたる住民生活に密着した要望がありました。しかし、配布された資料にある町税の未収金について背景や徴税実態だけに意見するのではなく、周知広報的な観点から、個人住民税と法人市民税を分けて議論することを提案する町民もいました。また、高齢者の低所得者住宅について、今後、駅前や中心市街地の通院や買い物に便利な立地に空き店舗を活用することを提言する別の町民もいました。

雑感

地域の緊急医療対策は全国的な課題ですが、栗山町の議会報告会では、病院経営や医師確保の難しさを踏まえ、町民一人ひとりが日常の生活の中でどのような貢献や協力ができるか真剣に議論していました。医療問題の核心に迫る質疑応答が行われていました。

議会内外でこれだけの量と質の仕事を遂行している栗山町議会議員の身体的、精神的な緊張感と疲労感は、想像を超えるものであろうと推測します。

<文責:赤川貴大>

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
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