概要
2010年4月28日、兵庫県加東市で開催された第232回兵庫県市議会議長会総会の研修の講師として、中尾修研究員と筆者が招かれ「地域主権下における議会のあり方-議会基本条例から考える-」としたテーマで講演いたしました。兵庫県市議会議長会総会には、兵庫県内の29市の正副議長と議会事務局長が出席されました。総会で研修を設け、政策シンクタンクから研究員を講師を迎えることは初めての取り組みとのことでした。議会改革が喫緊の課題となっている証左でもあります。
中尾研究員は、議会基本条例のいくつかの重要要素を説明いたしました。特に、議会の“議決責任”の意味や議員報酬や議員定数との関係について説明しました。筆者もこれまで調査した議会報告会等の概要と様子をお話させていただきました。
雑感
多くの議会報告会では、まずは議会が審議した案件について事実関係を粛々と説明することで始まります。続いて参加市民から質疑を頂き、その返答を議会側が行うことが一般的です。議会の審議結果を報告することが大前提です。議員個人の投票結果や主張、考え方を披露する場ではありません。あくまでも議会が実施したことを淡々と市民に報告することが主たる目的です。ただし、参加市民から個別の議員に対して賛否の表明や個人の政治思想や基本的な考え方を質すことが稀にあります。この場合は、個人の私見と断ることを条件に議員個人の発言が許されます。このような議会報告会を数回繰り返すことで議員も市民も“成熟”してきて、議会報告の途中に説明議員の個人的意見や賛否を表明することも可能となります。しかし、繰り返しますが、このレベルに到達するには回数と時間が必要です。まずは、淡々と議会の処理案件を報告することを中心に行うことが重要です。
よって報告議員の所属会派や政党は重要ではなくなります。議会として実施したことを報告するわけですから、議会の審議に参加していれば事実関係を報告することはできて当然です。もちろん、議員の資質も多様です。説明が慣れている議員や上手な議員もいれば、必ずしもそうではない議員もいます。参加市民の理解が得られるような人選が望ましいです。
地方議会の改革がたどり着くひとつの姿は、政策集団としての議会です。そのためには、一人ひとりの議員が政策通になることと同時に議会にノウハウと人材、立案する仕組みが必要となります。逆に言うと、ここまで見据えて議会改革に本腰を入れなければ、改革のための改革になり、遠くない時期に改革疲れに襲われます。ですから、地方分権、“地域主権”の時代を迎え、時代の趨勢としての地方議会改革は当然であり、その自治体や議会の身の丈にあった改革にしなければ市民からの信頼を失い、議会批判は一層高まります。
とは言え、他の自治体議会の動静が気になるのは人の性です。日本経済新聞社が独自の基準で全国の807市区議会を調査し、総合偏差値をはじき出し、それに基づいてランク付けしています。詳細は『日経グローカル』(2010年4/5 No.145)をご覧ください。この調査分析の手法や個別のランクについては議論の余地はありますが、公開度、住民参加度、運営改善度の分野や議会基本条例の有無、本会議のネット/有線中継状況、賛否の公開方法、政務調査費の金額と領収書提出義務、傍聴人数、一問一頭など議会改革の具体的な取り組みを項目として整理した意義は大きいです。
筆者としては、この指数を他の自治体議会との単純比較で一喜一憂するのではなく、自らの身の丈を見極める目安に使って欲しいと願っています。
<文責:赤川貴大>