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【生命倫理サロン】番外編 人の脳への介入の是非を考える夕べ

January 20, 2011

⇒ 番外編 「人の脳への介入の是非を考える夕べ」

⇒ 開催日時 :2011年1月20日(木)18:00-21:00(軽食をご用意します)

⇒ 開催場所 :日本財団ビル3F 東京財団内会議室

⇒ 概要説明(ねらい)

脳科学への関心が高まり、研究が急速に進んでいます。科学と医療の名のもとに、人の脳に対する介入はどこまで許されるのでしょうか。脳の活動の様子を映す研究だけでなく、機械と神経の接合、マインド・コントロール、向精神薬、はては磁気刺激から精神外科まで、様々な題材が浮かんできます。人格や精神の働きは、脳という物質を通して解明されるのでしょうか。そこではどのような倫理問題が出てくるのでしょうか。この非常に難しいテーマへの入口として、「人の脳への介入の是非を考える夕べ」を開催します。ぬで島研究員がこのテーマに関する映画を題材に解説を行い、問題意識を共有し、皆様と議論をいたします。

⇒ スピーカー紹介
ぬで島次郎(東京財団研究員)

⇒ スピーカーからのコメント

私たちは、現実と、現実でない夢や妄想は、全然違うものだと考えて、日々暮らしています。しかし、現実を現実と認識するのも、夢や妄想を抱くのも、どちらも等しく脳の営みの所産だといえます。その脳の営みに、薬物や強制的暗示や外科手術などの手段で外から介入し操作してしまえば、何が現実で何が妄想か区別できなくなるという、恐ろしい事態が生まれます。今回みなさんと観た映画は、そうした脳への介入が行われると、私たちがどういう状況に置かれることになるのかを、鮮烈な映像で示してくれました。現実に起こったこととそうでないことは何なのか、最後までいろいろな解釈ができるように、複雑なプロットが仕立てられていました。参加してくださったみなさんが、それぞれ違う解釈を披露してくださって、興味深かったです。

映画では、ロボトミーに代表される精神外科手術と、開発されたばかりの向精神薬療法が競合し、さらに東西冷戦で双方の陣営が兵士や市民を洗脳する技術を競って開発していた、1950年代半ばの米国の歴史的事実を設定の背景にしています。そうした事実背景があるので、いかにもありそうな話だと思わせ、ぞっとさせるのです。ただ、実際の臨床経験では、脳を切っても妄想や幻覚は消えることはなかったというので、映画の主人公の苦悩は、ロボトミーによっても解決されなかったと思われます・・。

ロボトミーのように手探りで大きく脳内を切る手術は行われなくなって久しいですが、改良され洗練されて、脳内の局所を正確に最小限切る精神外科手術が、いまも欧米やオーストラリア、韓国などで行われています。脳深部電気刺激(DBS)は、その延長に位置する技術です。それに対し日本では1970年代以降、主に政治的な理由で、精神外科の現代化の流れに背を向け、治療の選択肢として一切認めない(その存在すら示さない)状況が続いて、今日に至っています。

精神外科の臨床は、脳科学の発展と不可分に結びついています。その倫理的善悪を問う前に、まずは歴史的事実と、それをふまえた現状と将来の展望を知ることが不可欠だと思います。生命倫理サロンでは、引き続き脳科学の問題も取り上げて行きたいと思います。ゲストとしてあの人を、というリクエストがあれば、ぜひお寄せください。

⇒ 参加者のコメント

・脳科学に倫理を求めるスピーカーの意見は極めて重要だが、映画に出てきたことの中でどのような問題にどのような研究倫理が生じるべきなのかを、もっと教えて欲しかった。(60代男性)

・懇談まで残った参加者は15名程度だったので、みなさんの簡単な自己紹介があったらよかった。ロボトミーの歴史についてのスピーカーの解説は大変興味深かった。いま、うつ病や子供のADHD、パーキンソン病などに推奨されている薬物治療、さらには脳深部電気刺激(DBS)が、本質的には過去のロボトミー手術と同じだという視点は、非常に重要だと思った。精神疾患に対するDBSは、生殖医療のように、どこかの倫理委員会がガイドラインをつくって国内で規制したとしても、望む人は海外で許可された手術をする、という流れになるのだろうか。いずれにせよ、資本主義と自己責任に任せるのではなく、研究者を含め私たち1人1人の倫理的意識を高める努力をすべきだと思う。(30代女性)

    • 元東京財団研究員
    • 橳島 次郎
    • 橳島 次郎

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