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開催報告「新型出生前検査施行一年 ~研究の評価と今後のあり方を考える」と生命倫理サロンからのお知らせ

September 12, 2014

⇒ テーマ
: 「新型出生前検査施行一年 ~研究の評価と今後のあり方を考える」

⇒ 開催日時
:2014年9月4日(木)18:00-20:00

⇒ 開催場所
: 東京財団会議室

⇒ 概要説明(ねらい)
妊婦から採血するだけで胎児の3つの染色体疾患の有無を調べる「新型出生前検査(非侵襲的出生前遺伝学的検査)」が、「臨床研究」として始められて一年が経ち、その結果が発表されました。

この検査は、子宮に針を刺す侵襲的な検査が回避できるため、当事者に安心をもたらしうる利点があるとされています。一方で、検査が広がることで障害の有無に基づく命の選別を押し進める恐れもあります。一年間で八千件近くが実施された結果はどのようなものだったのでしょうか。

今回は、この検査の臨床研究を主管されたお一人である産婦人科医の左合氏をお迎えし、施行一年の結果をどうみたらよいか、今後どのようにこの検査と向き合えばよいかについて、参加者のみなさんと話し合ってみたいと思います。

⇒ 議論の展開
1 臨床研究一年の結果はどうだったか
・結果のデータは?
参加施設の数と内訳
相談数(説明を受けた結果、受診しなかった数も含めて)
受診数/陽性、陰性、偽陽性、偽陰性の数と割合(確度と精度)
確定診断に進んだ数と内訳/人工妊娠中絶の数と割合/出生数
当事者の感想や意見など
・カウンセリング・情報提供の中味は?
検査自体の説明/受診する・しないで妊婦が受ける負担について
決断後のサポートについて(受けられる保健医療・福祉などの有無や活用法など)
「命の選別」にならないように、どのような工夫や配慮がなされたか
検査や妊婦に関わるスタッフには、どのような研修が施されたか
・臨床研究の結果、何がわかったか/問題があるとすれば何か
2 今後どうするのがいいか
・臨床研究として続けるのか、別の枠組みに進むのか
コンソーシアム内の議論、意見は?/産科医会などの要望は?
・カウンセリングは必要十分条件か
保健医療福祉への接続を担う態勢をどうつくれるか
・社会全体で考えるべきことは何か

⇒ スピーカー :左合治彦氏(さごう・はるひこ、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター長)


⇒ 聞き手、モデレーター : ぬで島次郎(東京財団研究員)

⇒ 参加者からのコメント
・新型出生前検査が今後、スクリーニング的に使われる可能性があるなか、検査を実施する側(関与する多くの医療者)のスタッフに対する倫理観をどのような形で、教育・研修すれば良いのでしょうか。(60代 男性)

・13トリソミーのお子さんをお持ちの方のご意見、カウンセラーの方のご意見がとてもよかったです。左合先生は「粛々とやりたい」おっしゃいましたが、それらの意見を踏まえ、NIPTはもっと情報発信を自らしていくべきだと思いました。(30代)

・NIPT等で陽性になった場合、中絶が大部分を占めるのは命の選別をしているという感覚は少なく、社会や家族から差別されたり偏見があったり、いじめに遭うことを避けているのだと思う。経済的問題や両親の育てがいがあるかないかといった考えが絡んでいると思った。障害児を産むには両親、特に母親が決してゼロにならない差別等をはね返して生き抜いていけるか否かという精神力の強さの問題と家族や社会の障害児及びその親に対するサポート、相談等態勢の整備が急務と考えた。NIPT開発にはおそらく従来の出生前検査より妊婦の負担を軽減し精度の高いものにしたいという考えがあったのだと思う。検査は簡単にできるが、結果はかなり重いものなので検査前の遺伝子カウンセリングをし、妊婦の理解を高めておくこと、負の部分の覚悟をしておくことが重要だと思った。(女性)

・左合先生のお考えは誠実で、このテーマには適合しています。原子力を例にとり、結局、社会が基本的な解決を計ることが求められている、との大局的な見解を述べられたことは、社会的合意を目指す東京財団の講演らしい内容でした。

・加速度的に進展する検査・医療技術に対して、それがあまねく国民全体の福祉の向上に繋がる様に意図され、展開されうる医療・福祉体制の構築を見渡せているのか。医療技術に対する情報公開、アクセスに対する平等性、経済的な負担分配に対するコンセンサス等、社会的不平等(医療格差)を回避しつつ、医療技術の発展を支えていくためには、医療サイドにのみ負荷するのではなく、社会全体で考えるべきことなのだという実感を強くした今回のサロンの内容でした。(50代 男性)

・自分だったらどんな選択をするだろうかと考えながら、なかなか答えは定まりません。とても迷うのだろうと思います。施行1年の報道にあった、中絶した人の割合にドキッとしたのですが、検査をうけないという選択をした人や、障がいをもちながら生活している人が、社会の中にたくさんいるということを感じられました。(30代 女性)



東京財団生命倫理サロンからのお知らせです。
いつも生命倫理サロンにご参加いただき、ありがとうございます。
みなさまのご支援のおかげで、生命倫理サロン発足からちょうど4年が経過いたしました。
この4年という節目に、東京財団は、これまでの生命倫理サロンでの議論をとりまとめたいと考えております。
そのため、しばらくの間、これまでのサロンという形式はお休みさせていただきます。
この4年間でできたこと、できなかったことは何かを振り返り、今後、生命倫理に関する政策論議を進めていくためにはどのような方法がふさわしいのか、改めて検討する時間をいただければと思います。
その検討の結果はまとまり次第、報告させていただくとともに、生命倫理サロンのあり方も含め、今後の方向性についても併せて報告させていただきます。
サロンはしばらくお休みしますが、本ウェブサイト、メールアドレスは引き続き運営しておりますので、こちらからお知らせを発信することもあると思いますし、また、ご意見等ございましたらお寄せいただければ、今後の運営に活かしたいと思います。
多くのみなさまからのご支援、ご協力、本当にありがとうございました。
東京財団のこの場で、再びお会いできることを楽しみにしております。
どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

    • 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター長
    • 左合 治彦
    • 左合 治彦
    • 元東京財団研究員
    • 橳島 次郎
    • 橳島 次郎

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