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STAP細胞騒動を考える ~ 研究現場との対話から

June 5, 2014

⇒ テーマ
: 「STAP細胞騒動を考える ~ 研究現場との対話から」

⇒ 開催日時
:2014年5月28日(水)18:00-20:00

⇒ 開催場所
: 東京財団A会議室

⇒ 概要説明(ねらい)
:ひとつの研究発表が、どうしてこのような大騒ぎになってしまったのでしょうか。

STAP(刺激惹起性多能性獲得)細胞研究を巡っては、あまりにも多くのことが言われてきました。不正の程度、研究のチェックのあり方、若手起用の是非、国の振興政策との関わりから、関係者の個人的な資質や人間関係まで、その全貌をリストにするだけでも大変です。

ですがそれらの論評は、増えれば増えるほど、科学本来の問題から離れてしまっていないでしょうか。研究倫理問題への対応が、組織運営や国策との絡みでばかり論じられ、科学のあるべき姿の議論につながっていないのではないでしょうか。

私たちは科学研究に何を求め、成果をどう受け取るべきか。科学の営みを社会の中にどう位置づければよいか。科学と社会の関係を根本から見直すそうした問いが、研究の倫理を考えるうえで、大事な基礎になるのではないでしょうか。

そこで今回は、多能性幹細胞を用いた発生工学の研究をされている田川陽一氏をお招きし、研究現場では一連の騒動をどう見ていたか、そこから何を考えたかをお聞きし、STAP問題はどんな教訓を残したのか、今後の課題は何か、参加者のみなさんとじっくり話し合ってみたいと思います。どうぞふるってご参加ください。

 

⇒ 議論の展開

1 STAP研究をどうみたらよいか ~「刺激惹起性多能性獲得」はありうるか

・出発点となった発想ないし生命観について
・論文の扱いについて
・共著者、理研、マスコミ、それぞの問題は?
・動物実験のあり方という観点
・多能性研究の今後の方向について ~ES・iPSラインと異なる方向はありうるか

2 研究者の”修業”について

・養うべき作法、能力 何が大事か

3 女性研究者という問題

・「女性は粘り強い」は本当?
・科学研究に、男にはない「女の視点、女の発想」はあるか
・待遇、職場環境は改善されたか
・「若い女性研究者」を増やすことを科学政策の目標にするべきなのか

⇒ スピーカー :田川陽一氏(東京工業大学生命理工学研究科准教授、発生工学)

1989年、東京大学工学部工業化学科卒業。91年に東京大学大学院工学系研究科工業化学専攻修士課程修了後、同大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程(単位取得退学)、東京大学医科学研究所実験動物研究施設を経て、97年にベルギー・ルーベン大学レガ研究所に博士研究員として赴任。その後、信州大学医学部、同大学ヒト環境科学研究支援センター、同大学大学院医学研究科での助教授を経て、05年4月より現職。専門は、発生工学・再生医学・分子生物学。主に、ES細胞からの器官(組織)形成。

⇒ 聞き手、モデレーター : ぬで島次郎(東京財団研究員)

 

⇒ 聞き手からのコメント

世間で話題になったことを一歩引いて大局的に考えるうえで、実際に研究現場にいる方からのお話を聞けたのは有意義だったと思います。

私がいちばんなるほどな、と思ったのは、問題発覚後に理研がやるべきだったのは、不正の内部調査でもマスコミ向けの会見でもなく、STAP研究の何がどう問題なのか、科学的な真偽を専門家の間で徹底的に批判し合う公開学術集会だった、という指摘でした。

いまからでもこれはぜひやるべきだと思います。そうでないと、いつまでもさまざまな疑惑が五月雨式に続くばかりで、日本の科学研究の信頼を損なう事態が改善されないでしょう。

参加してくださったみなさんと、そういうあるべき筋を共有できたのが、今回の成果でした。

⇒ 参加者からのコメント

  • 科学論文、特に自然科学における論文というものの成り立ちについて、現場からの様々な角度の説明が聞けたので理解が深まりました。科学論文は再現性、実効性が確認されれば、技術的、経済的有効性を発揮し、社会の中に反映されるのでしょうが、一方で社会科学については、その妥当性が立証されているのか、その方法はどうあるべきか、考えさせられる点が多いと思います(50代男性)
  • 科学論文が間違っていても責められることは無い。納税者の興味は、意図的な捏造=嘘かどうかにある。今回、STAP細胞が実際に出来ていれば、DNA鑑定で確認できた、と研究者から聞けて満足でした。サロン参加者の議論も活発で大変楽しめた。(50代女性)
  • STAP細胞が研究者の間では当初から全く信憑性の無いものとして見られていたのだと分かりました。この騒動を科学者がどう世の中で活用していくか、一般人はそれが気になりました。この騒動で何か世の中の人が得をすることがあったでしょうか。(50代女性)
  • 日本人はとかく和を重んじる傾向がある。それゆえ自分を疎外したくない気持ちから自分の主張を控え、周囲に合わせたり、他人を批評したりしないことが美徳とされることが多い。しかし研究内容に関しては無礼講で自分の意見や考えを積極的に述べるべきだと考える。研究者自身を能力、技術面で伸ばしたり、周囲も勉強になるので、定期的に研究機関等でカンファレンスのようなものをもつことも重要だと思った。その積み重ねが将来よりよい研究ができる源となるからである。連携も重要である。(女性)
  • 結果が重要であることは言うまでもないが、その結果に到るプロセスも無視してはならないことを確認した。つまり、プロセスが十分に批判に耐えうるものでなければ、その結果も応分のものとなるからである。地道であるが、チームや周囲の人たちとの小さな対話を積み重ねることが結果的に大きな成果に結び可能性が出てくる。その意味で常に建設的に批判し合える環境をどう築き上げるのかが問われていると思う。これは自然科学に限った話ではなく、多くの分野や組織の共通の課題であると思う。(40代男性)
    • 東京工業大学生命理工学研究科准教授
    • 田川 陽一
    • 田川 陽一
    • 元東京財団研究員
    • 橳島 次郎
    • 橳島 次郎

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