: 「いのちの終わりをどう迎えるか ~オランダでの安楽死の実状から考える」
⇒ 開催日時
:2014年1月14日(火)18:00-20:00
⇒ 開催場所
: 東京財団A会議室
⇒ 概要説明(ねらい)
:日本では、終末期を迎えたら、延命措置は行わないで「尊厳死」を迎えさせてほしいと訴える声があって、超党派の国会議員がそれを認める法案を策定する試みが去年ありました。各党で意見の集約を目指す動きが進もうとしています。
世界的に見ると、さらに先を行く国があります。オランダは、2002年に世界に先駆けて、望む人に医師が薬物の投与などをして死に至らしめる「安楽死」を条件付きで認める法律を施行しました。いまでは国全体で亡くなる人の3%程度が、安楽死しているといいます。また新たに知られるようになった「自己安楽死」も、3%を上回るといわれています。
現代医療が行き渡った社会では、いのちの終わりをどう安らかに迎えられるかが、問題になっています。この難題への対応は様々です。あくまで最後まで医療措置をすべてやり続けるか。延命措置を控える「消極的安楽死」を認めるか、それとも手を下して死なせる「積極的安楽死」まで認めるか。病院か自宅か介護施設か、どこで最期を迎えるかも大きな問題でしょう。その背景には、医療だけでなく、福祉・住宅事情・家族事情・宗教上の生命観など、多くの社会的・文化的要因があります。
今回は、あえて最も極端な道を進んでいるオランダの実状に詳しい方をお迎えし、日本の日常とは異なる視点から、いのちの終わりの迎え方について、何をどこまで考えなくてはいけないのか、どうするのが望ましいのか、みなさんで話し合ってみたいと思います。どうぞふるってご参加ください。
⇒ 議論の展開
1 どんな終わり方を選べるか
・「自発的要請による生命の終結」とは
医師による注射 / 薬物の処方
・医療処遇の拒否、延命措置の不開始・中止 / 終末鎮静と緩和鎮静
・自己安楽死とは
・どこで? 時期だけでなく場所も選べるか
2 オランダではどのようにして「安楽死」の道を開くことができたのか?
・家庭医制度 / 安楽死にも健保適用? / 医療費抑制のためという動機はないのか
・住宅事情 ~自宅で死ねる環境がある?
・「語り合う」文化 ?家庭や学校での教育によって培われるのか?
・家族・友人関係 ?孤独な死は安楽死でない / 隣人への配慮
医師会の協力 / 司法判断の積み上げ ~法は免責を与えない
3 考えなくてはいけないこと
・「死ぬ権利」はあるか / 自己決定できることか / 自死・自己安楽死と自殺の違い
・医師にどこまで頼んでいいか / 拒むのも医師の裁量
・最期まで生き、終わりを迎えられる安心を保障するものは何か
脱タブー化 / いつでも死ねるという安心
⇒ スピーカー : シャボットあかね氏(通訳、コーディネート、執筆業)
1947年東京生まれ。父アメリカ人、母日本人。国籍アメリカとオランダ。
ワシントン大学で修士号取得後、東京教育大学大学院で日本文学研究。1974年からオランダ在住。
新刊に『安楽死を選ぶ―オランダ・「よき死」の探検家たち』(日本評論社)、その他の著書に『自ら死を選ぶ権利―オランダ安楽死のすべて』(徳間書店)、『オランダ暮らし十二カ月』(平凡社)、『オランダからの手紙-私がオランダ人になったわけ』(泰流社)。
⇒ 聞き手、モデレーター : ぬで島次郎(東京財団研究員)
⇒ 参加者からのコメント
・最近の日本では家族や縁者が集まって死を看取るという機会がめっきり減っているが、オランダで安楽死を行う場合、致死薬注射にせよ、Dr.処方下の患者自ら服用する自死の援助にせよ、Dr.および患者家族が見守る中で行われる点に文化や考え方、国民性の違いを感じた。(中略)ひっそりではなくopenだと思った。(女性)
・日本とオランダの事情が思った以上に違うことに驚いた。非常に参考になる話でした。しかし、日本の中でしっかり考えないといけない厳しさを感じた。(40代男性)
・生命、死、生き抜く事、良く生きるという抽象的なテーマに対して、きわめて具体的なイメージをもとに考えることができる、その機会をいただけました。(50代女性)
・「自分らしく生きたい」という思いは多くの人に共通していると思うのですが、高齢化・認知症の増加などを考えると、「自分らしく生きられないなら死を選ぶ」という人もオランダではもっと増えるのでしょうか?「認知症とともに、最期まで自分らしく生きる」という発想は生まれてこないのかしら?
どんなことも、愛する人、親しい人、色んな人と話し合う文化のあるオランダで、今後、認知症になったら自分らしく生きることができないと考える人がますます増えるのか、そうでないのか。認知症を原因として自発的要請による生命の終結を選ぶ人は増えるのか。経過をみていきたいし議論を知りたいです。(40代女性)
・(日本とオランダは)そもそも死生観(背景には宗教観、文化観がありますが)が違うので、それをもって在宅での安楽死を語ることの限界を感じました。ある意味「限界」を確認する機会として今回のサロンは有意義でした。また、家族の幇(ほう)助罪について聞きたかったです。(40代)
・これまでオランダの安楽死に対して持っていたイメージ(人から聞かされていた話)とはずいぶん異なった。有意義な話を聞けてよかったです。(50代女性)