第一回 給付つき税額控除具体化PT研究会
「具体的設計にあたっての論点整理」
11月13日,藤森克彦 みずほ情報総研 主席研究員 及び森信上席研究員より,「給付付税額控除に関する論点」について報告を受け,その後メンバーで議論を行った。
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11月13日研究会レジュメ
1.論点整理の概要
給付付税額控除の政策目的として,所得再分配・雇用促進・消費税の逆進対策があげられる(対象は母子世帯や中低所得世帯)。それぞれの目的について,既存制度や代替案との関係・整合性の検討が必要となる。
所得再分配については,生活保護や最低賃金との関連が重要である。生活保護にはスティグマの問題が,最低賃金制度については零細企業の雇用減少の恐れがあるため,給付付税額控除で対応する意義はある。また,オランダ等で導入されている社会保障負担との相殺についてどう考えるか。還付の必要性はほぼなくなるものの,「生活支援を受けている」という実感が乏しくなる可能性はある。
雇用促進については,今後20年間で,労働力人口が年間平均で20~45万人ずつ減少していくとの推計もあり,人々をいかに労働市場に押し出すかということが問題である。しかし,日本では生活保護制度で稼動能力等の要件及びその審査が厳格であり、福祉手当受給者が労働市場に移れる可能性は低い。この点,社会保障の機能強化とセットで、英国における「福祉から雇用へプログラム」のような政策パッケージのもとに給付付税額控除を位置づける必要があるのではないか。
また,消費税の逆進性の緩和の他,給付付税額控除の導入によってどの程度低所得者の最終所得が改善するか,勤労時間が変化するか,最終的な税収にどのような影響があるかについては,シミュレーションが必要である。
さらに具体的な設計上の論点として,世帯単位か個人単位か,申請主義か確定申告一体型か,上記以外の雇用政策・福祉政策との整合性,どのように所得補足を行うか(住基ネットや基礎年金番号の活用),執行機関をどうするか,不正受給への対応,財源をどうするか等の問題がある。
2.議論の概要
・政策のターゲットとして,ワーキングプアだけでなく,正規・非正規の是正という観点も(将来的に)加えていくことはできないか。現状ではこの点に関する解決の糸口が全くない。
・最低賃金制との関連。相対的貧困ラインと生活保護基準は,ほぼ同じという研究もある。
・日本の雇用政策の財源は最初のセーフティネットである「雇用保険」が保険,最後のセーフティネットである「生活保護制度」が租税。第二のセーフティネットとして設計するのであれば,規模的に税負担になるのではないか。
・従来の社会保障制度との整合性という点について,今までの制度と入れ替えるのか上乗せするのかで,意味が全然違ってくる。
・給付付税額控除のフェーズイン段階について。イギリスではこの段階はない。日本の場合も,同じような設計がいいのではないか。
・税額控除の対象として所得で管理するか労働時間で管理するか。時間で管理するのはかなり難しい。
・給付付税額控除の所得要件として,英国では世帯単位であるのに対し,オランダにおけるは個人単位。女性の労働参加を促すなら後者かもしれないが,一般には世帯単位が多い。
文責:中本淳 プロジェクトメンバー