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第2回 新しい地域再生政策研究会報告

October 6, 2009

研究会概要

○日 時:2009年9月28日(月)18:45-21:00
○場 所:東京財団A会議室
○出席者:
伊藤淳子(NPO地域コミュニティ情報推進協議会理事)
岩佐吉郎(名桜大学教授)
大塚洋一郎(NPO法人農商工連携サポートセンター代表理事)
金子和夫((株)日本総合研究所上席主任研究員)
坂本忠弘(地域共創ネットワーク(株)代表取締役)
関係省庁政策担当者
(東京財団)
赤川貴大(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)
井上健二(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)

議事次第

1.開会
第1回研究会での議論等のレビュー
2.地域再生関連施策の関係省の取組状況について
「地域経済活性化に向けた中小企業支援策の展開について」
3.ゲストスピーカー報告
演 題:『地域の「強み」を生かした産業の活性化と地域再生』
報告者:大塚洋一郎氏(NPO農商工連携サポートセンター代表)
4.報告を踏まえた質疑、意見交換
5.今後の研究会の予定について
6.閉会


前回研究会の議論等のレビューを行った後、前回に引き続き、地域再生に関係の深い関係省庁として中小企業庁の政策担当者から、「中小企業支援策の展開」状況について説明を受けた。

その後、ゲストスピーカーの大塚洋一郎氏(NPO農商工連携サポートセンター代表)から、地域の強みを生かした産業の活性化と地域再生、特にその具体的施策例として「農商工連携」の取組やソーシャルビジネス振興のための取組についてご報告を頂き、その報告をもとに意見交換を行った。以下は主な内容である。

【ゲストスピーカー報告要旨】

○デニス・メドウズ氏が発表した「成長の限界」で到来が予測されている「右肩下がりの時代」には、「成長すること、物をたくさん持つことが幸せ」という人間のDNAに刻まれた当たり前のことがはじめてそうではない社会・時代へと大きな変化する。そのような時期が間近に迫りつつある。
○生産・流通・加工を担う人達が連携し、「どういう物が売れるのか」という視点から農業生産を行い、新しい商品やサービスを生み出していくことを狙った農商工連携は、食料生産を支える農業の強化、地方の内需の拡大や地域再生に有効な施策である。
○明治の農商務省時代以来、農水省と経産省が一緒に施策を展開するのは84年ぶりだが、これも時代の要請。農商工連携は農水省、経産省のどちらかでも補助金が出せる画期的な制度となっている。
○農商工連携の先進的な取組としては、山形県酒田市にある?平田牧場の減反米からとれる飼料米を活用した「こめ育ち豚」のブランド化や福岡県岡垣町の?グラノ24Kの規格外品を含む地元農水産物を活用した地産地消レストランの展開などがある。農商工連携には新商品の開発と新サービスの開発の2つのタイプがあり、新サービスの開発の方はあまり実践例がまだ出ていないものの、こちらの方が地域活性化の効果が比較的高い場合が多いのではないか。
○農商工連携の最大の問題は、農と商工という全く異なった両方の文化を理解し、農と商工をつなげるコーディネーターが質・量ともに圧倒的に不足しており、この育成が急務である。
○山梨県北杜市のNPO法人「えがおつなげて」が耕作放棄地を借りて、そこを希望する企業に使用してもらい生産活動に参加してもらう取組を展開している。当初の企業側のニーズとしては、CSRや食品の安全・安心な調達などがあるが、実際に参加してみると、農作業という集団での肉体労働を通じて、職場の職員の一体感の醸成などの効果があることを知り、企業研修として利用したいとのニーズも高まっている。
○バングラデシュの経済学者ユヌス・モハメッド氏によると、ソーシャルビジネスとは、Business for Othersで、チャリティでは持続しないので、ビジネスであることが大切。日本ではその担い手の2/3がNPO。ソーシャルビジネス/コミュニティビジネスには都市型と地方型と2つのタイプに分けられるが、地方のソーシャルビジネス/コミュニティビジネスは農商工連携との関係も深い。

【意見交換ポイント】

○コーディネーターの育成が重要だが、先生になれる人の数が絶対的に少ないし、育成には時間がかかる。中間支援団体の育成も大事。育成のための予算も必要である。
○コーディネーターへ協力を要請する場合に補助金で認められている人件費があまりにも世の中の相場から乖離しており、多くの人がボランティアでは働くことを余儀なくされている現状がある。コーディネーターのこれまでの実績等に応じて、弾力的に人件費の額を決め、支出できる制度にすることが必要ではないか。
○最近は信用金庫などの金融機関も地域力連携拠点になるなど、ソーシャルビジネス等にも関心を持つようになってきているし、これを支援するファンドが生まれるなど新しい動きは出つつあり、こうした動きを支援していくことは大切である。
○補助金による支援だけではなく、NPOへの直接の寄付を増やすことで、その活動を支援できるような仕組みも考えていくべきではないか。
○JA、商工会や観光協会などの既存の中間支援団体の改革、再生が最も重要である。
○現行の制度は、補助金の申請に様々な資料を要求され、それに多くの時間をとられるという本末転倒な状態。補助金の支払いが年度末なので、ある程度自前でお金を持っていなければ補助金すら受けられない。こうした点は改善すべきである。
○道の駅など自治体の整備した施設に、より民間が参入しやすい環境をつくり、民間の創意工夫でこれら施設を有効に活用しながら多様なサービスを生み出し、提供していくことが大切である。


文責:井上

〔参考:研究会配布資料〕
■地域経済活性化に向けた中小企業支援策の展開について(10.0MB)
■地域の「強み」を生かした産業の活性化と地域再生(5.17MB)

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
    • 赤川 貴大
    • 元東京財団研究員
    • 井上 健二
    • 井上 健二

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