■ 第3回 「税・社会保障制度の抜本改革」を考える討論会【日時】 2011年2月22日(火)18:30~20:30
【会場】 日本財団ビル2階 会議室(港区赤坂1-2-2)
【発表者】 高橋和憲(日本商工会議所 理事・企画調査部長)
逢見直人(日本労働組合総連合会 副事務局長)【コーディネーター】 亀井善太郎(東京財団研究員・政策プロデューサー)
【共催】 東京財団、(株)PHP研究所、構想日本、みずほ総合研究所(株)、(株)日本総合研究所
【議論に参加した国会議員】(50音順、敬称略)
河野太郎(衆)、階 猛(衆)、白石洋一(衆)
討論会概要
第3回の討論会は、日本商工会議所(以下、日商)、日本労働組合総連合会(以下、連合)より、それぞれの社会保障制度改革に関する考えについて説明があった後、出席した国会議員による質疑応答、意見交換が行われました。
なお、今回の討論会から、(株)日本総合研究所が加わり、5つの政策シンクタンクによる共催事業となりました。
日商からは、社会保障制度の再構築を実施しつつ、消費税を含む税体系の抜本改革を行い、必要な歳入を確保すべきであるとの意見が出されました。具体的には、自助と共助をベースとする現行の社会保険方式を原則としながらも、現役世代や企業に大きく依存した税・社会保険料体系の見直しが必要であるとの考えです。
連合からは、社会経済の現状(高齢者偏重、セーフティネット機能の低下等)や税財政の課題(歳出と税収の乖離、税あるいは社会保障による再配分効果の弱体化等)を踏まえ、社会保障の抜本改革案が示されました。具体的には、?子ども・子育て、?社会的セーフティネット、?年金制度、?医療保障、?高齢者福祉、?障がい者施策、?居住保障の7分野における改革案です(詳細は下記の説明資料参照)。
国会議員は前回出席者も含め3名の参加となり(出席国会議員の個別名は上記参照)、それぞれの説明を受け、国会議員を含めた議論が展開されました。
今回も、下記の論点整理をベースに議論が進みました(これに加え、地方と国の関係も考慮する必要がありますが、これは第4回に議論する予定です)。
1. 社会保障全体の財政規模をどう見積もり、どう配分するのか
・そもそも、社会保障の範囲とは
・医療・介護・年金のバランス(財源面)
2. 世代間の負担・給付の格差をいかに是正するか
3. 職種間の格差をいかに是正するか
・共済年金/厚生年金(3号保険者)/国民年金 (医療も同じ構造)
・企業負担のあり方/被用者の国民年金加入問題
4. 医療・介護のユニバーサルサービスをいかに確保するか
・そもそも、ユニバーサルサービスとは
・そもそも、サービス提供を国がコントロールできるか
・財政支出の圧縮の実現
5. 老後の生活をいかに保障するか
・低年金・無年金による問題
6. 制度への信頼をいかに回復するか(とくに年金)
・国民年金納付率の低迷、そもそも国民皆年金か
前回と同様、医療・介護よりも、年金制度の合意がまず先行すべきであろうとの共通認識から、年金制度に関する議論から始まりました。
まず、現行の枠組みをベースとした制度によって、上記論点を解決できるかとの議論になりましたが、日商を除き、議員3名と連合は現行制度の手直しではもはや問題の解決は難しいとの認識でした。とくに、無年金や低年金対策については、税金をもって対応すべきとの主張が大勢で、最低保障年金もこれにあたるとの意見がありました。
政府の集中検討会議でも話題になっている年金制度の一元化については、1.国民年金への加入を強いられている被用者の厚生年金への移行、2.厚生年金と共済年金の統合、3.自営業者等の所得比例年金の創設(所得捕捉が条件)、4.すべての年金制度の一元化、以上のプロセスで行うべきで、1.と2.は速やかに、3.以降は時間をかけて行うべきとの連合の提案について、議員も基本的な認識は一致していました。
前回の議論でも一部の議員から示された「そもそもの社会保障の範囲」について、今回の議論では、連合から上記7項目のような幅広い枠組みが示されました。社会保障の範囲を狭い意味で考えれば、最近の政府における議論の発端となった「所得税法等の一部を改正する法律 附則第104条*」に示された“年金・介護・医療・少子化対策”の負担の先送りを解消するということでしょうが、そもそも、国民の生活や経済実態を考えれば、連合が示したような幅広い枠組みに関する議論が求められましょう。現在進行中の政府の集中検討会議での議論は、民主党の公約である最低保障年金や一元化を当面見送るとの与謝野担当相の発言も伝えられるなど、国民の税負担増ばかりが先行しているように見えます。こうした現状を踏まえ、当面の財源の手当ての問題とは別に、幅広い社会保障政策の各々について、ロードマップを示す等の形で全体像を説明することが不可欠との発言が議員からありました。
すべての議論をここで明らかにすることはできませんので、詳細は議事録あるいは中継録画をご覧いただきたいのですが、出席した国会議員にはそれぞれの主張はあるものの、現在の政府の進め方に対する問題提起もあり、有意義な議論となったと思います。
今回で3回目となる討論会ですが、国会議員の出席が3名と極めて低調でした。
国会議員が数あるスケジュールの中から本討論会を選ぶかどうかは議員自身の政治判断です。
火曜日の夕刻に設定したのは、公務がなく、国会議員がもっとも出席しやすい時間だからです。国民の期待は極めて大きく、管総理も政権の重要課題と掲げているからには、それなりの関心があるはずです。加えて、コーディネートはともかく、それぞれの説明者は政府の集中検討会議と同じで本件に関する第一級の方々にご参加いただいています。同会議に出席できない大半の国会議員にとっては、同じ意見を聞くことができるばかりか、自分自身の考えを表明することもできます。これだけの”場”であるにも関わらず、このような出席状況は、本件に対する政府与党ばかりか、野党、つまり全ての国政を担う全ての政治家の本気度が問われるものです。
本討論会は日本を代表する政策シンクタンクが共に取り組んでいます。同じ問題意識を持つ政策シンクタンクが、本討論会の開催を通じて、政治家の本気度を真正面から問うていかねばなりません。
東京財団 研究員・政策プロデューサー
亀井善太郎
*政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする(一部抜粋)。
■当日の配布資料
* 「社会保障制度改革と税財源問題に関する日本商工会議所の意見骨子」はこちら
* 「重要政策課題と商工会議所の考え」はこちら
* 日商:「社会保障と税の共通番号制度に関する意見」はこちら
* 連合:「安心社会の基盤、全世代を支える持続可能な社会保障と『公平・連帯・納得』の税制改革」はこちら
なお、今回の討論会から、(株)日本総合研究所が加わり、5つの政策シンクタンクによる共催事業となりました。
日商からは、社会保障制度の再構築を実施しつつ、消費税を含む税体系の抜本改革を行い、必要な歳入を確保すべきであるとの意見が出されました。具体的には、自助と共助をベースとする現行の社会保険方式を原則としながらも、現役世代や企業に大きく依存した税・社会保険料体系の見直しが必要であるとの考えです。
連合からは、社会経済の現状(高齢者偏重、セーフティネット機能の低下等)や税財政の課題(歳出と税収の乖離、税あるいは社会保障による再配分効果の弱体化等)を踏まえ、社会保障の抜本改革案が示されました。具体的には、?子ども・子育て、?社会的セーフティネット、?年金制度、?医療保障、?高齢者福祉、?障がい者施策、?居住保障の7分野における改革案です(詳細は下記の説明資料参照)。
国会議員は前回出席者も含め3名の参加となり(出席国会議員の個別名は上記参照)、それぞれの説明を受け、国会議員を含めた議論が展開されました。
今回も、下記の論点整理をベースに議論が進みました(これに加え、地方と国の関係も考慮する必要がありますが、これは第4回に議論する予定です)。
1. 社会保障全体の財政規模をどう見積もり、どう配分するのか
・そもそも、社会保障の範囲とは
・医療・介護・年金のバランス(財源面)
2. 世代間の負担・給付の格差をいかに是正するか
3. 職種間の格差をいかに是正するか
・共済年金/厚生年金(3号保険者)/国民年金 (医療も同じ構造)
・企業負担のあり方/被用者の国民年金加入問題
4. 医療・介護のユニバーサルサービスをいかに確保するか
・そもそも、ユニバーサルサービスとは
・そもそも、サービス提供を国がコントロールできるか
・財政支出の圧縮の実現
5. 老後の生活をいかに保障するか
・低年金・無年金による問題
6. 制度への信頼をいかに回復するか(とくに年金)
・国民年金納付率の低迷、そもそも国民皆年金か
前回と同様、医療・介護よりも、年金制度の合意がまず先行すべきであろうとの共通認識から、年金制度に関する議論から始まりました。
まず、現行の枠組みをベースとした制度によって、上記論点を解決できるかとの議論になりましたが、日商を除き、議員3名と連合は現行制度の手直しではもはや問題の解決は難しいとの認識でした。とくに、無年金や低年金対策については、税金をもって対応すべきとの主張が大勢で、最低保障年金もこれにあたるとの意見がありました。
政府の集中検討会議でも話題になっている年金制度の一元化については、1.国民年金への加入を強いられている被用者の厚生年金への移行、2.厚生年金と共済年金の統合、3.自営業者等の所得比例年金の創設(所得捕捉が条件)、4.すべての年金制度の一元化、以上のプロセスで行うべきで、1.と2.は速やかに、3.以降は時間をかけて行うべきとの連合の提案について、議員も基本的な認識は一致していました。
前回の議論でも一部の議員から示された「そもそもの社会保障の範囲」について、今回の議論では、連合から上記7項目のような幅広い枠組みが示されました。社会保障の範囲を狭い意味で考えれば、最近の政府における議論の発端となった「所得税法等の一部を改正する法律 附則第104条*」に示された“年金・介護・医療・少子化対策”の負担の先送りを解消するということでしょうが、そもそも、国民の生活や経済実態を考えれば、連合が示したような幅広い枠組みに関する議論が求められましょう。現在進行中の政府の集中検討会議での議論は、民主党の公約である最低保障年金や一元化を当面見送るとの与謝野担当相の発言も伝えられるなど、国民の税負担増ばかりが先行しているように見えます。こうした現状を踏まえ、当面の財源の手当ての問題とは別に、幅広い社会保障政策の各々について、ロードマップを示す等の形で全体像を説明することが不可欠との発言が議員からありました。
すべての議論をここで明らかにすることはできませんので、詳細は議事録あるいは中継録画をご覧いただきたいのですが、出席した国会議員にはそれぞれの主張はあるものの、現在の政府の進め方に対する問題提起もあり、有意義な議論となったと思います。
今回で3回目となる討論会ですが、国会議員の出席が3名と極めて低調でした。
国会議員が数あるスケジュールの中から本討論会を選ぶかどうかは議員自身の政治判断です。
火曜日の夕刻に設定したのは、公務がなく、国会議員がもっとも出席しやすい時間だからです。国民の期待は極めて大きく、管総理も政権の重要課題と掲げているからには、それなりの関心があるはずです。加えて、コーディネートはともかく、それぞれの説明者は政府の集中検討会議と同じで本件に関する第一級の方々にご参加いただいています。同会議に出席できない大半の国会議員にとっては、同じ意見を聞くことができるばかりか、自分自身の考えを表明することもできます。これだけの”場”であるにも関わらず、このような出席状況は、本件に対する政府与党ばかりか、野党、つまり全ての国政を担う全ての政治家の本気度が問われるものです。
本討論会は日本を代表する政策シンクタンクが共に取り組んでいます。同じ問題意識を持つ政策シンクタンクが、本討論会の開催を通じて、政治家の本気度を真正面から問うていかねばなりません。
亀井善太郎
*政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする(一部抜粋)。
■当日の配布資料
* 「社会保障制度改革と税財源問題に関する日本商工会議所の意見骨子」はこちら
* 「重要政策課題と商工会議所の考え」はこちら
* 日商:「社会保障と税の共通番号制度に関する意見」はこちら
* 連合:「安心社会の基盤、全世代を支える持続可能な社会保障と『公平・連帯・納得』の税制改革」はこちら