世界が注目する2020年11月のアメリカ大統領選挙。予断を許さない選挙戦の行方について、データからは何を読み取ることができるでしょうか。ここでは候補者支持率などをはじめ、大統領選を読み解く上で鍵となるデータをわかりやすくまとめ、定期的にアップデートしていきます。 |
出典:https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/direction_of_country-902.html
今回取り上げるのは「国の方向性Direction of Country」に関する世論調査である。これはアメリカが正しい方向に向かっているか否かを問うものであるが、6月26日現在、Real Clear Politics(RCP)の平均値[1]ではトランプ政権期に入って初めて、肯定的な回答(「正しい方向に向かっている」、right direction)が25.9%、否定的な回答(「間違った方向に向かっている」、wrong track)が67.4%と、その差が40%以上に達した。
オバマ大統領が就任した2009年1月にRCPによる平均値のまとめが始まって以来、肯定的な回答と否定的な回答が同率であったのは2009年初夏頃のみであり、それ以外の時期においては一貫して否定的な回答が上回っている。今回のように差が40%を超えたのは数回のみであり、RCPのまとめ開始直後でリーマン・ショックに始まる世界経済危機のただなかにあった2009年初頭、2011年夏の債務上限危機、2013年の夏から秋にかけてのオバマ・ケア法案をめぐる民主・共和両党の対立とそれに続く政府機関の閉鎖、大統領選挙における両党の党大会があった2016年夏など[2]で、景気の悪化や党派的・イデオロギー的対立の激化が影響したと考えられる。
直近では肯定的な回答が40%を超えていた2月末~3月頭から徐々に悪化し、ここ1か月で急速に否定的な回答が増えている。新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大と、黒人男性暴行死事件および抗議デモの拡大によって、経済の悪化と党派間対立が同時に作用しているとみられる。
[1] https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/direction_of_country-902.html
[2] https://news.gallup.com/poll/1669/general-mood-country.aspx
ピュー・リサーチ・センターの「アメリカへの満足」調査は、RCPにまとめられている他社の「国の方向性」調査とほぼ同様の回答傾向を示している。リーマン・ショックが生じた2008年10月には「満足」という回答が7%、「不満」という回答が91%となり、満足度は調査開始以来最低を記録した。クリントン政権期の政府機関閉鎖(95年秋、調査は96年初頭)やオバマ政権期の債務上限危機(11年夏)・政府機関閉鎖(13年秋)など党派間対立による統治の危機に際し「不満」の割合が顕著に高くなる傾向も「国の方向性」調査と同様である。