海外への影響
アメリカ有権者の二極化の動きはアメリカだけでなく、世界の経済、安全保障にも大きな影響を与えることは言うまでもない。ピュー研究所が同じサンプルを別の手法で分析した結果でそれは明らかになっている *2 。
この分析では、前述の調査と同じデータを8つの政治グループにわけている。「断固保守」は政府と社会福祉に批判的で、社会問題でも保守である。「ビジネス保守」は小さい政府を好むが、ウォール街やビジネスを支持し、移民政策改革も支持している。この2つのグループは共和党支持者だ。
一方、「断固リベラル」は政府、経済、ビジネス、外交政策、また人種、同性愛、中絶といった社会面でもリベラルな考えを持つ民主党支持者だ。
これら3グループは国民の36%に過ぎないが、有権者の43%、政治的に活発な層の57%を占めており、必ず投票し、政策や社会問題に関心を持つ。
<図9 The 2014 Political Typology>
例えば、保守の71%がアメリカは海外よりもっと国内問題にフォーカスすべきだと考えており、リベラルの55%が国際問題に活発に対応する方がアメリカのためになると考えているのと対照的である。
<図10 Conservatives Deeply Divided Over Active U.S. Role in World Affairs>
また、平和を維持するには保守の71%は軍事力が最善の手段だと考えているのに対して、リベラルの91%は外交がベストだと考えている。
<図11 What is the Best Way to Ensure Peace?>
テロとの戦いについても、保守の72%は武力行使がベストと考えているのに対して、リベラルの88%は武力行使が嫌悪とさらなるテロ行為を生むと考えている。
<図12 Democratic Groups Differ Over Use of ‘Overwhelming’ Force against Terrorism>
中国については、保守の66%が中国に対して強硬な姿勢をとるべきだと考えているのに対して、リベラルの58%が経済関係を強めるべきだと考えていることがわかる。
<図13 Steadfast Conservatives Most Likely to Favor Tougher Stance Against China>
自由貿易協定については、保守の51%がアメリカにとって悪いと考えており、良いと考える者は31%。これに対しリベラルの62%が良いと考えており、悪いと考えているのは27%に過ぎない。これは民主党=保護主義という固定概念を抱きがちな日本人にとっては意外な結果かも知れない。
<図14 Free Trade Agreements Draw Majority Support from Most Typology Groups>
この分析からも、共和党支持層の分裂が続いていることが明らかである。例えばビジネス保守の72%が不法移民でも一定の条件を満たせば市民権を得ることを支持しているが、断固保守は50%しか支持していない。また、断固保守は政府ばかりか、大企業にも反感を抱いており、48%が経済システムは大企業に有利にできていると考えている。外交政策面では、ビジネス保守が自由貿易や国際的な役割を支持しているのに対し、断固保守はその両方に反対である。
いずれにせよ、そもそも麻痺状態にある議会は、中間選挙を控えてますます何も動きがとれなさそうだ。共和党が議席を増やすことが確実な中間選挙後、オバマ大統領が残る任期2年で立法面で何かを達成する可能性はほぼゼロと言えるだろう。
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*2 : Beyond Red vs. Blue: The Political Typology, Pew Research Center
http://www.people-press.org/files/2014/06/6-26-14-Political-Typology-release.pdf
■池原麻里子