オバマ大統領は4月4日、2012年の再選を目指すと表明した。これはクリントン、ブッシュの第一期と、ほぼ同時期の再出馬宣言となった。オバマ大統領の再出馬発表は、2008年同様、支持者に送られた2分のビデオでは、女性が「変化」について、若い男性が「希望」について語っている。
オバマ陣営の戦略は国内外の危機への対策を成功させつつ、変化をもたらした大統領というオバマのイメージを定着させることだ。国内については、ヘルスケアを改革し、経済を立て直し、外交政策ではイラク戦争を収束に向けて米兵撤退を開始したという実績を売り込むことによって。
無党派層の支持を失ったことが明らかになった昨年11月の中間選挙以来、オバマは彼らをターゲットとした中道寄りの政策を推進してきた。それは富裕層向けの減税の維持や、移民法改革、地球温暖化対策といった共和党との妥協である。
クリントン大統領のアドバイザーだった民主党系世論調査専門家ダグ・ショーンは、オバマの支持率がほぼ50%であること、そして予備選で対抗馬がいないこと、支持基盤がかなりしっかりしていることは有利な点だが、2008年にオバマを支持した無党派層が離れてしまったこと、依然として好景気とはいえないこと、イラク、アフガニスタン、リビアと3つの戦争を抱えていることが不安材料だと指摘する。
リベラル層のオバマ支持は70%代で安定しているが、オバマの中道寄りの政策が、リベラル派の不満材料となっていることも事実だ。再出馬を発表したのと同日、グアンタナモ海軍基地にあるテロ容疑者収容施設の閉鎖という選挙公約を結局、放棄することになったのは象徴的である。9・11同時多発テロの首謀者カリド・シーク・モハメド被告を米国内で裁判にかけようとしていたが、猛反対にあったため、結局、同海軍基地の特別軍事法廷で審理することになったのだ。唯一、リベラル派を満足させたのは、選挙公約通り、同性愛者のアメリカ軍への入隊規制を撤廃したことである。リベラル層の支持を確実に票に結び付けるには、2008年のようにグラスルーツを活性化することが課題となるが、あの特別な興奮を再現することはまず不可能であろう。なお、2008年にその80%の支持を確保した黒人、ヒスパニック、マイノリティーが、2012年には有権者の28%を占めることは有利な点ではある。
2008年大統領選挙で、オバマは選挙人365人を獲得した。新国勢調査による調整後、これは2012年だと360人ということになる。前回、勝った州のうち、共和党が台頭しているオハイオ、インディアナ、ミシガン、ウィスコンシン、アイオワ、バージニア、ノースカロライナは失う可能性が高いが、それでも270人でぎりぎりで再選を果たすことが出来る。しかし、これはペンシルバニアとフロリダで勝つこと、そして前回同様ネブラスカの選挙人1人を確保することが前提となる。ペンシルバニアもフロリダも共和党化していることを考慮に入れると、再選に向けてのレースはなかなかの苦戦となりそうだ。オバマ陣営にとって唯一、明るいニュースは、現時点で共和党予備選にこれといったフロントランナーがいないことかもしれない。
オバマ再選チーム(参考:ワシントン・ポスト)
大半が2008年の民主党大統領選でも活躍した面々である。
David Axelrod
一番、オバマの信頼が厚く、オバマの思考方法を熟知する人物。
Cornell Belcher
民主党全国委員会の世論調査専門家として、若者や黒人層というオバマの支持基盤を分析。
Joel Benenson
オバマお気に入りの世論調査専門家として主任となる。オバマ同様、中・長期的視点から物事を分析。
Jennifer O’Malley Dillon
この2年、民主党全国委員会のエグゼキュティブ・ディレクターを務めた後、選挙参謀本部副本部長に就任。グラスルーツ活動を熟知。
Patrick Gaspard
ニューヨーク労組出身で、この2年はホワイトハウス政治ディレクターに。O’Malley Dillonの後任として、民主党全国委員会のエグゼキュティブ・ディレクターに就任。
Robert Gibbs
前ホワイトハウス報道官のギブスはオバマに大変に近い。選挙本部のコミュニケーション担当になる予定。
Larry Grisolano
2008年同様、メディア・オペレーションを担当する予定。
Valerie Jarrett
現在のホワイトハウスのシニア・アドバイザーのポジションを維持すると思われるが、オバマが彼女のアドバイスに耳を傾けることは有名だ。
Alyssa Mastromonaco
2008年にはスケジュール担当。現在のホワイトハウス次席補佐官の立場から、オバマの時間が有効に使われるようにスケジュール管理をする。
Jim Messina
前ホワイトハウス次席補佐官。2012年選挙参謀本部長。
Dan Pfeiffer
選挙経験豊かなホワイトハウス・コミュニケーション・ディレクター。
David Plouffe
2008年大統領選では大活躍した、ホワイトハウス・シニア・アドバイザー。マネージメント能力と政治知識に長けている。
Julianna Smoot
2008年、選挙資金集めを担当した。O’Malley Dillonとともに選挙参謀本部副本部長に就任。アメリカ大統領選挙史上、オバマを初めて10兆円を集めた候補にするかも知れない。
■池原麻里子(ワシントン在住ジャーナリスト)