ワシントンUPDATE プーチン再選後:次は何が? | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

ワシントンUPDATE プーチン再選後:次は何が?

April 4, 2018

ポール・J・サンダース
センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト常務理事

ウラジミール・プーチン氏のロシア連邦大統領再選は予想されていたが、このロシアの指導者が4期目に何をするかは不透明なままである。プーチン氏がどのような選択をするかは、ロシアだけでなく米国とその同盟国そしてロシアの近隣諸国、さらにはシリア、中東情勢にも重大な影響を及ぼす可能性がある。

人事刷新

喫緊の問題は、プーチン氏がロシア政府や大統領府で大幅な人事刷新を行うかどうかである。これまで、人事問題は考えているが、5月初めの5期目スタートの前に発表はしないと述べ、そうした問題を避けてきた。しかしながら、多くの外交政策幹部がロシアの標準的な退職年齢を超えて、10年以上ポストについているという事実から、人事面でいくつかの変化はあり得ると考えられる。

重要なポスト、あるいは新チームや実質的な新チームに新しい人物を据えることは、ふたつの問題をひきおこす。まず、新しく指名された人物は前任者の政策・見解を共有するだろうか。ロシアの外交と安全保障政策ではプーチン氏が結局のところ唯一の政策決定者ではあるものの、部下たちは少なくともいくつかの問題でプーチン氏の考え方を方向づけることができる。さらに言えば、もし新しい当局者が異なった見解を持っているなら、熟慮の上の決定に、その点ではロシア国民や国際社会に伝えようとするシグナルにも、これがどの程度反映されるかである。

第2の問題は、プーチン氏がしっかりした経歴の人物を選ぶか、逆に3期目に多くの内政ポストで採用したような、若手であまり名の知られていない当局者を任命するというアプローチを広げるかである。これは重要だ。なぜならば、世間の評価や政治的地盤を既に得ている人物は(プーチンと比較して控えめであっても)、政策に影響力をもつことができるからだ。知名度のない人々は大統領により依存し、それ故、柔軟性は劣るだろう。

政策変更

国内政策、特に経済を見ると、ロシア国民はドミートリー・メドベージェフ首相と彼の内閣にあまり満足していない。ロシアの独立系調査機関「レバダ・センター」の世論調査によると、それぞれの不支持率は60%に近づいている。ロシアの経済は2017年に緩やかな成長に転じたものの、過去3年は小幅な落ちこみを経験した。プーチン氏はこれまで、経済活動の不振を西側の制裁とエネルギー価格下落のせいにして、経済の政治に与える影響を抑えることができた。しかし、どれだけ長くこれを続けることができるかははっきりしない。逆に言えば、西側の融資へのアクセスが限られている時に、しかしながら、ロシアがコストのかかる必要な経済改革をどのように遂行できるかもはっきりしない。このことは、新しい当局者が、どれだけ改革を決意していても、なし遂げられることに限界があるということである。

ロシア経済が停滞している限りでは、大衆の支持を動員するプーチン氏の能力は依然として重要である。しかしながら、ロシアの経済の弱さが外交政策にどう影響するかを予見することは難しい。ひとつの考え方は、経済の苦境とそれに伴う大衆の不満で、プーチン氏は穏健な外交政策をとらざるを得なくなるというものだ。制裁はまだ目に見える結果を生みだしていないが、これは米国と欧州の制裁の目標のひとつである。もうひとつの考え方は、ロシア政府はより強引な外交政策を遂行することによってだけ政治的支持を維持できるということだ。この場合、ロシア政府は国際舞台での米国への尊大な対立姿勢をさらに強める賭けにでる。もしこれが本当なら、過去と同様に、クレムリンは多分、経済問題をロシア弱体化を狙う西側の試みのせいにするだろう。そして、首相と経済担当相を定期的に交替させることで、大衆の怒りを和らげ、経済問題に関してはプーチン氏ではなく政府を非難するという現在の大衆の傾向が維持されることを期待している。

4期目が最後か

プーチン氏の大統領4期目で最も興味深い問題は多分、これが最後の任期なのかどうか、そうならば、新指導者への交替にどう対処するのだろうか。2008年、プーチン氏は3期連続で大統領を務めることを禁止した憲法の条項に従い、大統領を退き、非常に影響力の大きい首相になった。再びその手を使うだろうか。選挙後の記者会見でこの問題を問われた際、プーチン氏は引退をほのめかしたものの、明確な回答はしなかった。彼の言葉の文字通りの解釈は100歳になるまで現職に留まることはしないであり、5期目(2030年)を終えるときの年齢である70歳代後半まで大統領で居続けるかどうかについては言及しなかった。

プーチン氏の真意をめぐる不確実さは、4期目終了が近づく2024年には、大きな政治的問題になるとみられる。プーチン氏が退陣をほのめかし続けるなら、後継争いをかきたてるだろう。また、最終的にはレームダック大統領(高位の公職から去ることが広く予想されていることで政治的に弱体化した指導者)と米国で呼ばれるような存在になるだろう。一方、大統領でありつづけると明確に伝える、もしくは、退陣をほのめかすが、後になって翻意するのなら、新指導者を期待し、6年たてばようやく新指導者を迎えられると考えていたロシア国民からの反発を招くかもしれない。プーチン氏ほどの経験豊かで強力な政治家であってもどちらの道も容易でなく、不人気な政策の遂行に挑むことを難しくするかもしれない。外部の観察者はじっとなりゆきを見守るしかない。

オリジナル原稿(英文)はこちら

    • Senior Fellow in US Foreign Policy at the Center for the National Interest President, Energy Innovation Reform Project
    • ポール・J・ サンダース
    • ポール・J・ サンダース

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究員のコンテンツ

0%

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム