「文明と環境プロジェクト」では、2007年11月14日にカンボジアでの発掘調査結果に関する第1回記者発表を行いました。
<2008年1月開催の第2回記者発表のレポートは こちら >
安田喜憲主任研究員は、本年4月より「文明と環境プロジェクト」の一環として、経団連自然保護基金および文部科学省科学研究費の支援も得て、プンスナイ遺跡の発掘調査品の整理・分析を続けてきました。これは本年1~2月に文部科学省科学研究費の支援により行ったカンボジア・プンスナイ遺跡の発掘調査の結果に基づくものです。
今回の記者発表では、安田主任研究員と、調査団メンバーの一人である宮塚義人先生(宮塚文化財研究所所長)が、この度の分析結果について、現地での写真や地図を使って詳細な報告を行いました。
とくに、今回の分析により明らかになった新事実として、カンボジアにはアンコールワット以前の紀元1世紀からすでにプンスナイに数千単位の人々が暮らす「都市文明」が存在したこと、12世紀に発展したアンコールワットの文明はインド文明の影響を受けた文明であるのに対し、それ以前のプンスナイの文明は中国の長江文明の影響を強く受けた文明であったことが詳しく報告されました。これは、従来の東南アジア地域における文明伝播の通説を書き換える新たな発見として、今後さらに分析が進められる予定です。
また、今回出土した装飾品や土器の数々に見られる精緻な技術、自然と人間の調和した稲作漁労型の人々の暮らしなどが報告され、地球環境問題が深刻化する現在にあって、人類が生き延びていくためには、我々の「文明」観そのものを問い直し、稲作漁労型文明の叡智からこそ学ぶべきではないかとの問題提起が行われました。
今回の記者発表には、主要各紙を含むマスコミ21社が出席し、活発な質疑応答が行われました。
(正面左より、安田喜憲主任研究員、加藤秀樹東京財団会長、宮塚義人氏)
◆ 第2回記者発表「カンボジア最古の水の祭壇を発見」(2008年1月)のレポートは こちら
(文責: 吉原祥子 )