2009年4月1日開催の第7回研究会は、ゲストに阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第二室長)を迎え、「貧困問題」をテーマに議論を行った。
阿部氏からは、まず「貧困」の定義や先行研究の特徴についてご説明頂いたあと、近年の我が国における貧困問題の拡大について、子どもの貧困を中心に、詳細なデータに基づいて解説を頂いた。
とくに貧困と子どもの学力に密接な関係が見られ、例えば国際的な調査では過去数年の間に日本の子どもの学力が成績下位の層でさらに低下していることなどが紹介された。同氏の調査によると、子どもが12歳以下の時点において、すでに多くの親が経済的理由から子どもの高等教育進学をあきらめているという。こうした親の状況が、子どもの勉強に対する「意欲」や「希望」を喪失させ、貧困と学力低下が連鎖していく大きな要因ではないかとの指摘があった。
また、我が国ではこうした貧困問題の実態が認識され始めたのはごく最近であり、現行の政策では貧困削減効果が少ないことも問題として提起された。
続く全体議論では、こうした現状から、どのような現代社会の特徴が浮き彫りになるか、「現代病理」の視点から貧困問題の背景を掘り下げるための議論を試みた。今回の議論を盛り込んだ報告書を7月末までにとりまとめる予定である。
(文責:政策研究部 吉原祥子)
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