政策提言
「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点~日本の水源林の危機 II ~」
日本では国土の地籍調査が48%しか完了しておらず、所有権の移動も十分把握されていません。とくに山林は秀吉の太閤検地でも地籍が正確に把握されず、未だ6割は地籍調査が未了です。国土利用計画法に基づく売買届出データもどこまで実態をカバーしているか不明です。
一方で、日本の土地の私的所有権は極めて強く、欧米では土地の最終処分権や優先的領有権を政府が明確に持つのに対し、我が国では何人(なんぴと)であれ、ひとたび土地を所有してしまえば、本人の同意なしに所有権を移転することは極めて困難です。安全保障面等への配慮から森や水など国土資源に関する経済行為を直接的に規制する法律もありません。
林業低迷やグローバルな資源争奪戦を背景に、このまま山林売買が進行すれば、持ち主がはっきりしない山林が増え、水源林や生態系の機能が失われたり、住民の安全・安心が脅かされるような問題が起きる可能性もあります。しかし、現行制度下では、国や自治体が直ちに対処することは困難です。
このほど東京財団では、水源林をはじめとする国土資源に関する重要論点を「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点~日本の水源林の危機 II」にまとめ、早急に打つべき手立てについて提言しました。
★ 政策提言全文
政策提言の骨子
【水源林保全のための政策】
1.土(林地)を護る
提言① 地籍の確定――森林区画整理事業の創設と地籍調査の完了
提言② 林地市場の公開化――オープンな新市場の創設
提言③ 国土利用計画法による売買規制と公有林化
2.緑(立木)を護る
提言 林業再生――森林を手放さなくて済む生産環境の創造
3.水(地下水)を護る
提言① 地下水保全域のゾーニング
提言② 地下水を私水から公水へ
【国土資源(土・緑・水)保全のための総合的課題】
1.重要なインフラ(施設系インフラ・自然系インフラ)の棚卸し
――計画・事業体系の再編集
2.計画段階での合意形成プロセスの公開化
3.新しい社会環境の創造 ――辺境再生
【提言に関するお問合せ】
東京財団 政策研究部 吉原祥子
電話:03-6229-5502 Email:yoshihara@tkfd.or.jp