我が国の土地制度を見ると、地籍調査は未だ49%しか完了しておらず、国土法に基づく土地売買届出も2000年の地方分権一括法以降、事務が自治体に任され、国は補足率を把握していないなど、国土の所有実態を国が正確に把握できる仕組みになっていません。
私たちの国土資源をグローバル経済の「商品」として失ってしまう前に、国レベルと自治体レベルでの早急な法整備が必要です。
「国土資源保全」プロジェクト では、2008年から取り組んできた山林売買の実態調査とこれまでの研究報告をもとに、最新の売買事例と早急にとるべき政策について提言をまとめました。
政策提言「失われる国土 ~グローバル時代にふさわしい『土地・水・森』の制度改革を~」(PDF:728KB)はこちら
【政策提言1】 「国レベル」
(1)特定エリアの保全策
a.過疎国土保全法:農地や山林等のうち、公益性の特に高い土地について売買の事前届出制を導入。また、所有者不明地の公有化、国土資産管理基金の創設等を行う。以上を包括的に規定する「過疎国土保全法」を制定する。
b.国家安全保障土地法:国として守るべき「重要国土」(国境離島、重要港湾、防衛施設周辺、重要水源地等)について、管理行為規制、売買規制、国公有化等の措置を規定する。
(2)地籍調査手法の改正:幅広い実施主体の参画を得た、新たな地籍調査制度を創出する。
(3)公有地売却の見直し:公有地の保有価値の再評価を行い、インターネット競売等、現行の売却のあり方の見直しを行う。
【政策提言2】 「自治体・住民レベル」
(1)地域特性に応じた土地ルール(条例等)の創設:各地域の地理や資源を踏まえたルールが必要。全国一律ではなく、地域特性に応じた条例等の整備を行うべき。
(2)国土資産管理基金等による不明資産の解消:森林環境税等を所有者不明地対策や公有化の予算に充てる。
(3)国土保全にかかる地域ガバナンスの強化:自治体、関係機関、住民が一体となった取り組みを推進し、先行モデル情報の自治体間での共有を促進する。
(4)地域住民の取り組み支援:ローカルを「生活圏」とする住民が、当事者として保全活動に参加できる取り組みと支援を行う。