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かかりつけ医に誘導する報酬改定
三原 :東京財団では過去の提言で、提供体制改革としてのプライマリ・ケアを訴えています [1] 。つまり、「日本の医療制度が国民の立場から見て評価が低いのは、本当に患者の立場に立って責任を持ってくれる人、信頼のおける代理人がいないからではないか」という問題意識の下、全人的かつ継続的なケアを提供するプライマリ・ケアの必要性を指摘しました。そのためには代理人になる医師(家庭医、総合診療医など)の育成、報酬制度の見直し、診療所と病院の役割分担などが必要になると考えているのですが、2016年度診療報酬改定では「紹介状なしに大病院に行った場合、5,000円を徴収する」という内容が盛り込まれました。これは医療機関の役割分担を進めるのが目的ですが、今回の改定はどう思われますか。
西沢 :金銭的な誘導が先に来ている印象です。
三原 :医療は情報格差、不確実性が大きく、サービスの質を評価しにくいので、通常の財やサービスと違い、患者の選択は難しい面があります。そんな中で、金銭だけで誘導しようとすると、「5,000円を払えば大病院に行ける」あるいは「5,000円を払えない人は大病院に行けない」と受け止められる可能性があります。
西沢 :そうですね。本来はビジョンとしてプライマリ・ケアの重要性を国民に示すことが必要なのに、「大病院にかかるとお金取ります」というメッセージになっている。
三原 :そもそも論で言うと、医療制度は「患者―医師の関係」から考えるべきと思っています。今までの日本はフリーアクセス、どこに行くのも自由でした。しかし、これでは困難な病気に対処するべき大病院に軽症の患者が行くことになり、コスト的に非効率になります。そこで今回の診療報酬改定になったわけです。一方、日本の対極に位置するのが昔のイギリスの仕組みです。つまり、診療所への登録制を通じて1:1の関係を固定化させるとともに、いきなり大病院に行くのを制限していました。しかし、これでは医師が必要なケアを提供しない過少診療のリスクが高まります。そこで、イギリスは登録制を維持しつつも、全人的かつ継続的なケアを提供する家庭医(GP、General Practitioner)が3~5人ぐらい診療所で働き、その中からGPを選べるようにし、診療所も選べるようにしました。日英両国の間に位置するのがフランスで、以前は日本みたいにフリーアクセスでしたが、2005年から「かかりつけ医」(medécin tritant)に登録が義務付けられており、かかりつけ医を経由しない場合は負担を重くする制度にしています。「患者―医師の関係性がどれだけ縛られるか」という点で見ると、実はいくつかの段階があるのではないかと思っています。日本として、どこを選ぶべきか考える時期が来ていると思います。
西沢 :そのような「患者-医師」の関係が構築されると、2016年度診療報酬改定で作られた「かかりつけ薬剤師(薬局)」も本来、要らないですよね。かかりつけ薬剤師(薬局)導入議論の背景には薬剤費の上昇がありますが、薬剤費を引き上げている一因である多剤投与が起きるのは、患者が複数の医師に行くから発生します。医療の入口を1カ所に絞るとともに、電子カルテで情報を繋げれば解決する話です。
三原 :かかりつけ薬剤師(薬局)は後で触れるとして、ご指摘の点は曖昧模糊とした「かかりつけ」という言葉に起因しているかもしれません。元々、「かかりつけ」とは政治的に作られた言葉です。1980年代に厚生省(当時)が英国のGPに近い「家庭医」を創設しようとしたのですが、日本医師会が「医療費抑制に使う」「医療の国家管理に繋がる」などを理由に反対し、現行のフリーアクセスを前提とした「かかりつけ医」という言葉が生まれました。一方、専門医制度を改革する流れの一環として、英国のGPに近い「総合診療医」というプライマリ・ケア専門医の育成が2017年度から始まります。しかし、両者の違いは非常に分かりにくい。
西沢 :プライマリ・ケアの専門能力を持つ総合診療医と違い、かかりつけ医とは単なる関係性の問題ですよね。
三原 :その通りです。極論を言うと、西沢さんが私を「かかりつけ医」と決めた瞬間、私が能力を持っていないヤブ医者だったとしても、かかりつけ医になれます。一方、総合診療医はプライマリ・ケア専門医としての能力を持っているので、両者は似て非なる存在です。実際、西沢さんも参加されていた社会保障制度改革国民会議報告書 [2] では「緩やかなゲートキーパー機能を備えたかかりつけ医の普及は必須」「総合的な診療能力を有する医師(総合診療医)は地域医療の核となり得る存在」と書いています。かかりつけ医=機能、総合診療医=能力となっているのが違います。総合診療医はプライマリ・ケアの能力を持っていますが、かかりつけ医には「機能」しか書かれておらず、「能力」が十分に定義されていません [3] 。
西沢 :かかりつけ医の能力がどう担保されるのか見えにくいですね。一方で、「主治医」という言葉もあります。
三原 :「在宅医」という言葉もあり、国民から見たら分かりにくい。現実論を言えば、総合診療医の育成は恐らく10年程度を要するので、団塊世代が75歳以上になる「2025年問題」に向けた次善の策として、現在の資源を有効活用する必要があり、かかりつけ医機能を強化するのは一案かもしれません。しかし、そういう議論を一切せず、かかりつけ医や総合診療医の違いも明らかにしないまま、政策だけが進んでいる。これでは多くの人は分からないと思います。
西沢 :「かかりつけ医を持とう」と言われますが、普段健康な人は、病気になって初めて医者に行きますよね。そんな中で、どうやって関係性を構築するのか。まさか「こんにちは、用もないのに来ました」みたいな御用聞き的なことはできないし。むしろ、患者は医療の入口が分からず、さまよっている状況ではないでしょうか。
三原 :一般論として、病気になった患者は弱い立場になります。患者―医師に情報格差があるし、ニーズの発生が不確実だし、医療機関の評価指標も整備されていないので、信用できるか分からない「病院ランキング」の類いしかないわけです。つまり、患者は「自分の症状の原因が判然としない」「どんな病院や医療機関があるのか分からない」「医師や医療機関が信頼できるか分からない」と不安になるので、「大病院に行けば様々な検査が受けられるし、高度な機器も揃っているので安心」と考え、大病院に行くようになります。その行動を有識者は「非合理的」と批判しますが、少なくとも患者本人にとっては合理的な行動と言えます。ここを前提にしないと、「医療の入口を適切に見付けられない患者が悪い」という論理になってしまいます。2015年改正医療法 [4] では、国民に対して適切な医療機関を選ぶよう求める努力義務規定が入ったのですが…。
西沢 :むしろ、「総合診療医を通じたプライマリ・ケアの方が良い」というメッセージが大切ですよね。それを伝えるのは難しくないと思います。日本総合研究所が2015年末に開催したシンポジウムでは、総合診療医である地域医療振興協会地域医療研究所長の山田隆司さんがこんな一例を出していました [5] 。腰の曲がったおばあさんが「腰が痛い」と言って診療所にやって来る。レントゲンを撮れば、圧迫骨折を伴った骨粗鬆症がひどい。それで整形外科でレントゲンを撮り、薬や注射でも良くならない。でも、ある時たまたま往診に行くと、寝たきりのおじいさんを介護しており、「こんなことをやっていては良くならない」と思ったので、ヘルパーを入れてもらった。結局、医学で解決できることは少なく、介護サービスをアレンジすることで解決する。でも、今のシステムでは診療報酬が出ないですよね。
三原 :現在の仕組みでは評価されないです。
西沢 :山田さんのお話を数分聞いただけで、多くの人は「そういう先生の方が良いね」と思うのではないでしょうか。
三原 :私もそう思います。プライマリ・ケアが発達しているイギリスでGPをやっている澤憲明さんと昨年に対談した際、似たような話が出ました [6] 。患者は稀な難病を持つ30代の女性。現時点で医療的にできることはなく、澤さんが初めて接した時、彼女は「大丈夫。私は特別だから」と言ったものの、声のニュアンスや些細な表情からは逆の意味が伝わってきたため、澤さんは数秒黙った後、彼女から伝わってくる感情をそのまま伝えたいと思い、「特別な立場にいる時ほど寂しくないですか?」と言うと、暫くの沈黙が続いた後、「実は寂しいの」と打ち明けたそうです。そこから対話が広がり、「患者団体に入会したいけど、年会費が30ポンド(日本円で約6,000円)かかる。だから入会をためらっている」と言うので、澤さんは10ポンド(日本円で約2,000円)に下げてもらうよう交渉し、数カ月後に来た時に女性は「今は同じ状況にいる友達ができて幸せ。有り難う」と言ってくれたそうです。
西沢 :そういう医療が普及するには医師のトレーニングだけでなく、診療報酬体系の見直しも必要ですよね。前回の 「医療統計の信頼性を考える―OECD総保健医療支出、国民医療費の問題点を中心に」 で「今の国民医療費は公衆衛生や予防が入っておらず、国民治療費と同じだ」と話しましたが、治療するだけでなく、心を含めてケアしていく体系に改める必要があると思います。
三原 :確かに治療だけじゃなくて、社会資源も使ったケアを考慮できるシステムにするには今の出来高払いでは難しいですね。
西沢 :今の出来高払いのシステムは薬を出したり、検査したりする方が有利なインセンティブ設計になっていますからね。
三原 :国が目指している「地域包括ケア」 [7] の文脈でもプライマリ・ケアは有効と思っています。地域包括ケアの概念は非常に曖昧ですが、住民の支え合いを含めた「地域ケア」と、医療・介護の統合的なケアを提供する「包括ケア」に分けるとすると、後者を医療面から支えるのがプライマリ・ケアと思っています。
西沢 :医療・介護連携という点で見ると、総合診療医が地域包括ケアの中心になり、その人がコーディネーター役になり、例えば介護や福祉、住民のボランティア団体、患者団体などに繋ぐと、患者の利便性は高まりますよね。地域包括ケアと言うと、一般的には介護っぽい話になってしまいますが。
三原 :元々、地域包括ケアを介護保険の世界に入れてしまったのが間違いだったと思います。2012年施行の改正介護保険法で地域包括ケア関係の規定を整備 [8] し、その後に政府は介護予防に力点を置いた埼玉県和光市のモデルを「地域包括ケアのモデル」と推奨し、最近は「介護保険の新しい総合事業 [9] を通じて地域包括ケアを作る」と言っています。しかし、地域包括ケアと介護保険は本来、何の関係もありません。地域包括ケアとは生活を支援することなので、介護保険でカバーできる部分は一部に過ぎないし、ましてや介護予防事業なんて介護保険のごく一部に過ぎない。地域包括ケアが地域の課題を解決するための手段だとすると、行政や専門職がやれることは限られてくるし、医療・介護サービスで対応できる部分も限られてくると思っています。
かかりつけ薬剤師の展望と課題
三原 :次に、かかりつけ薬剤師(薬局)の議論に入ります。その機能に「患者に安全で安心な薬物療法を提供」「最適な薬学的管理・指導を行う」などと書かれており、2016年度報酬改定で加算措置が設けられました [10] 。その方針自体は良いと思います。しかし、正直に言って分からない面が多々あります。薬剤師法に「必要な薬学的知見に基づく指導」「調剤録に(必要)事項を記入」などの規定があり、1970年代から進められてきた医薬分業 [11] も「患者の安全確保」「薬剤費の適正化」を目的としています。これらを踏まえると、かかりつけ薬剤師(薬局)は既存の考え方を焼き直したに過ぎない。元々、規制改革会議が医薬分業の見直しを提起したため、政治的な駆け引きの副産物として生まれたのですが、そうだとしても国や業界として「今までの取り組みがなぜダメだったのか」「どこが不十分だったのか」を検証する必要がありますが、現場は「如何に加算を取るか」「如何に加算の基準を満たすか」に汲々としている印象です。
西沢 :そもそも、薬剤師は期待されるほど権限を持っていないのではないですか。例えば、処方箋に病気の名前が書かれていない。
三原 :仰る通りです。薬剤師は医師の処方箋について疑問がある場合、疑義照会することが義務付けられています。しかし、医師は疑義照会に対して返答する義務を持っていません。これを知り合いの薬剤師は「不平等条約」と評しています。少し印象操作が入るかもしれませんが、医師の処方箋に疑問を感じた薬剤師が医師に電話し、「おかしいと思うのですが…」と言っても、「それでやっといて」と電話を切られる。意識の高い医師は薬剤師のアドバイスを尊重しているみたいですが、多くの医師は違うかもしれません。
西沢 :病気が分からない中、薬剤師は患者から話を聞いても、患者が正確に答えるかどうかも分からないですよね。
三原 :それで真面目な薬剤師は一生懸命、薬局の小窓から話を聞こうとしていますが…。
西沢 :患者は「何でもう一回同じことを言わなきゃいけないのか」と思っている。
三原 :その通りです(苦笑)。
西沢 :本当は医師と薬剤師が電子カルテで情報を共有すれば良いわけですよね。
三原 :そうすれば医師と薬剤師の意思疎通が容易になるし、医薬分業が目指すダブルチェックも可能になります。両者の間で十分に意思疎通できれば、医師が独占している処方権の一部を薬剤師に移しやすくなり、医師の負担も軽減できます。
西沢 :それが患者本位だし、コストも削れるはずです。薬剤師にしても、その方がやり甲斐があるし、医師と同じ6年間も大学で学んでいる以上、専門的な知識や技能を生かされる方が良いに決まっています。しかも医師と必ずしも敵対するわけじゃないですよね。本来、多剤投与で飲み残しなんて、医療費のムダという問題以前に、命や人権に関わる問題です。当たり前のことが何で進まないのか不思議です。
三原 :そもそも全ての薬局を「かかりつけ薬局」にするという国の方針が意味不明です。国の資料には「患者の選択権を確保」と書いているのに、全ての薬局がかかりつけ薬局になったら選択できなくなります。むしろ、イギリスの診療所評価システムのように、登録患者数、平均待ち時間、患者満足度、薬歴管理の充実度、疑義照会、医療機関・介護施設との連携、地域活動の状況などのデータを全部出すと、患者が選べるようになります。そうすれば薬剤師(薬局)の判断に応じて経営も多様化すると思います。もちろん、こうした制度改革を一気に進めるのは難しい。このため、制度改革のスピードは漸増主義、つまり徐々に進めれば良いと思いますが、これまでの総括や反省が必要だし、ゴールも示すべきと思います。
地域医療構想の展望と課題
三原 :提供体制改革として、地域医療構想が進められています。団塊世代が75歳以上を迎える2025年の需要を意識しつつ、急性期の病床圧縮や慢性期の削減など地域の望ましい医療体制を整備するのが目的とされており、厚生労働省は都道府県に対し、今年秋ぐらいまでに作るよう要請しています。この施策をどうご覧になっていますか。
西沢 :冒頭に述べた「紹介状なしの大病院は5,000円」と同じですね。金銭で首をギュッと締める感じがあります。
三原 :元々、「急性期を如何に圧縮するか」で始まった政策ですからね。
西沢 :社会保障制度改革国民会議に加わっている時から疑問を抱えているのですが、基本的に病院のベッドの話ばかりです。
三原 :その違和感は「川上に位置する病床の機能分化という政策の展開は、退院患者の受入れ体制の整備という川下の政策と同時に行われる」という報告書の言葉に象徴されていますね。病床の在り方を見直すことは必要ですが、これでは私達の暮らしの場である地域が単なる「病床の受け皿」になります。
西沢 :病床を仮に削減しても、受け皿がどうなるか分からないですよね。地域医療構想が病床に偏重しているのは、単に「診療所に比べれば、病院は政治的な反発が少なく、制度改正を進めやすい」という事情に過ぎず、決して診療所の議論が不必要だからしていないわけではない。そこに違和感を持ちます。だから診療所の在り方も変えていく必要がありますよね。例えば、診療所を24時間対応にしないと、患者が病院から出た時に困ります。そうすると、今みたいにソロプラクティス(診療所に1人の医師が対応している状態)では無理なので、約10万カ所の診療所を3~4万カ所に集約するとか、根本的な対策が必要になります。診療所で働く医師のスキルについても、いきなりプライマリ・ケアのスキルを持てないとしても、生涯教育を含めた教育システムを整備することが必要だし、先ほども話題になりましたが、診療報酬体系やアクセスも見直す必要があると思います。確かに現状に比べて大きく変わるけど、その望ましさを国民に説得する労力が足りないのではないでしょうか。
三原 :同感です。しかも、病床削減に対して地域住民、医療関係者の不安が出てきたためか、厚生労働省は「2006年の医療法改正で機能分化の推進をうたっており、いきなり言い始めた話ではない」「地域医療構想の目的は病床削減じゃない」と強調し始めました。地域医療構想の目的を病床削減じゃないとすると、「何を以て地域医療構想の成功とするのか」という問いが出てきます。もし成功した状態を「2025年の最適な医療体制の整備」とすると、国は報告書 [12] で病床の将来推計を出し、全国で最大20万床程度を削る必要を示していますが、「将来の医療体制について地域で合意する」ことが成功した状態になるため、必ずしも国の試算通りに病床を削らなくても良いことになります。さらに言えば、「成功した状態を誰が認定するか」という問いも出てきます。これを原理主義的に考えると、主権者である住民が判断することになります。そうなると、厚生労働省が評価するのは本来、変な話になります。
西沢 :そうなると、「地域医療構想を何のために始めたのか」という疑問が出て来ますね。
三原 :その通りです。しかし、いくら言葉を積み重ねても、元々の入口が病床再編、しかも急性期の圧縮だったことは明らかです。それは社会保障制度改革国民会議報告書の「川上、川下」という言葉に代表されるし、機能別病床区分に現れています【表】。国は高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つから医療機能を選ぶように言っていますが、慢性期を除く3つは冒頭に「急性期」という言葉を付けています。でも、生活から考えると、逆に「川上」は生活に近いプライマリ・ケアと思います。
西沢 :その通りと思います。「地域」と言っても病院の計画づくりの域を出ていない。コミュニティの計画あるいは構想ではない。
三原 :病床を適正化するという政策自体は必要なので、地域医療構想がうまく行くのかウオッチしていく必要がありそうですね。提供体制について一通り議論が出たので、次回は財政的な話を論じたいと思います。
[1] 東京財団(2015)『医療保険の制度改革に向けて』、同(2012)『医療・介護制度改革の基本的な考え方』。
[2] 社会保障目的で消費増税を決定した際、社会保障の在り方を話し合う場として設置された有識者の検討組織。2012年11月から2013年8月まで計20回開催し、同年8月に報告書を公表した。
[3] 日本医師会などは2013年8月、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義するとともに、かかりつけ医に求められる機能を示しており、2016年度から「かかりつけ医機能研修制度」を始めた。
[4] 医療法が2014年通常国会で改正された際、「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない」の規定を追加した。
[5] 日本総合研究所ウエブサイト2015年12月9日「【国民主体の医療制度構築に向けて-医療保険制度のガバナンスを考える】第1部各パネリストによるプレゼンテーション4~」を参照。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/8695.pdf
[6] 2015年9月18日東京財団ウエブサイト「〔対談〕日英の比較からプライマリ・ケアを考える(上):GP(家庭医)の日常」を参照。
http://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=1150
[7] 法令上は「可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、介護サービスに関する施策、介護予防のための施策及び地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進」とされている。
[8] その後、2013年成立の社会保障制度改革プログラム法(持続可能な社会保障制度改革推進法)、2014年成立の地域医療介護総合確保推進法にも規定された。
[9] 新しい総合支援事業は要支援者向け介護予防給付のうち、通所介護、訪問介護を従来の介護予防事業に統合するとともに、市町村の裁量を広げる制度。2017年4月までに全市町村が移行する。
[10] 例えば、「かかりつけ薬剤師指導料」(70点)では、①患者が指名したことを示す書類の作成・管理、②薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務し、保険薬局に半年以上在籍、③行政の講演会など地域医療の活動への参画―などの要件が必要。
[11] 医薬分業は医師、薬剤師の分業を目的としており、日本では1974年以降、医療機関と薬局を切り離す政策が進められてきたが、規制改革会議が昨年、「医療機関と薬局を物理的に分離するフェンスの規制が患者の利便性を損なっている」として見直しを要請した。
[12] 政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」は昨年6月、2025年時点で必要な病床数は115万~119万床程度であり、最大20万床程度削減する必要があるとの試算を示している。