2008年8月6日、グルジア軍と南オセチア自治州の部隊との衝突から始まったグルジア紛争による米ロの緊張は、9.11以降構築されてきたテロとの戦いという米ロの協力、また5月に交わされた米ロ原子力協定の行方、そしてNATOへの軍事的影響など様々な波紋を生んでいます。
東京財団ユーラシア情報ネットワークでは、去る9月16日に第二回オーバービュー・ミーティング「グルジア紛争が国際社会に及ぼす影響」を開催し、今後、この波紋がユーラシア各地、ひいては国際社会にどのような影響を及ぼすかを分析しました。
<第二回オーバービュー・ミーティング「グルジア紛争が国際社会に及ぼす影響」>
日時:9月16日 19:00~20:30
場所:東京財団A会議室
参加者:
佐々木良昭主任研究員(トルコ、イスラム圏)
畔蒜泰助研究員(ロシア)
益田哲夫研究員(南西アジア)
田代秀敏研究員(中国)
関山健研究員兼プログラムオフィサー(モデレーター)
平沼光プログラムオフィサー
ミーティングは、関山健研究員兼プログラムオフィサーをモデレーターに、各地域の担当研究員から下記レジュメに沿って報告がされた後、全員によるディスカッションにより分析を行いました。
尚、今回はメディア関係者、関係官庁、企業関係者など外部のオーディエンスを会場にお迎えし会を開催いたしました。
また、当日ミーティングには参加できませんでしたが、米国担当:渡部客員研究員、インド担当:森尻研究員からもレジュメが提出されておりますので合わせてご参照ください。
ディスカッションでは、論点として、
・ロシアがグルジアに関与する意図
・グルジア軍の動きにアメリカの思惑が働いてるのではないかと言われる背景
・米ロの「新冷戦」へ発展する可能性
・同地域の安定を図る上でキーとなる国は何処か
などが話し合われました。
会場からも関心の高かった、米ロの「新冷戦」へ発展する可能性については、ロシア側としては外交を安定させ内政の経済改革に集中していきたい意図が伺えるが、今後アメリカがどのように動くかが重要で、特に2017年に貸与期限が切れるクリミア半島セバストポリにあるロシアの黒海艦隊基地問題の行方などは注視していくべき点であるという議論がされました。
グルジア紛争が日本に直接的に与える影響というものは大きくはありませんが、同地域の不安定化や米ロの緊張の高まりは、ロシアのWTO加盟への影響、米ロ原子力協定凍結による日ロ原子力協定への影響など、日本とっても間接的な影響を被ると考えられますので、ユーラシア情報ネットワークでは引き続き情報発信をしていきたいと思います。
報告者:平沼光 東京財団プログラムオフィサー